民主党が狙うトランプ前大統領の公職永久追放 弾劾裁判は無罪ほぼ確実も、プランBを実行か
2月9日、トランプ前大統領の弾劾裁判が始まった。アメリカ史上、大統領の弾劾裁判は計4回に上るが、うち2回はトランプ氏となった。
「弾劾管理人(マネジャー)」と称する検察官役の下院議員9人の訴追に対し、トランプ氏の弁護団が反論。そして、陪審員役の全上院議員100人が、1月6日の議会議事堂乱入事件における大統領の反乱扇動の罪について判断する構図となっている。
弾劾裁判直前で入れ替わったトランプ氏の弁護団は、弾劾裁判初日の要領を得ない陳述や反論文書が欠陥だらけであったことから準備不足を指摘されている。だが、弾劾裁判の行方は政治が左右するため、弁護団が誰であろうと無罪評決の結果となることはほぼ確実視されている。アメリカ政治専門家は弾劾裁判を結末が分かっている「政治ドラマ」にすぎないと揶揄する。
「退任後の弾劾裁判は違憲」で無罪に
弾劾裁判の行方を示唆したと見られているのが、1月26日の動議だ。退任後の大統領の弾劾裁判は違憲、とする動議を共和党ランド・ポール上院議員が提出し賛成45、反対55で否決された。
このときの共和党の造反者が、ベン・サス、スーザン・コリンズ、ミット・ロムニー、パット・トゥーミー、リサ・マカウスキの計5人の上院議員のみであったのが注目に値する。なお、弾劾裁判初日に同様の採決が行われた際、ビル・カシディ上院議員が加わり造反者は計6人となった。しかし、弾劾裁判の有罪評決には上院の3分の2の67人の支持が必要であり、民主党50人に加え、少なくとも共和党17人の造反を要する。
今後、弾劾裁判の審理を通じて考えが変わる共和党議員はわずかながら増えるかもしれない。だが、今の2極化社会において、共和党造反者が6人から17人に増えることは考えられない。共和党議員の多くは、大統領が反乱を扇動したかどうかという弁明の難しい問題には言及せず、弾劾裁判のプロセス面を理由に無罪を主張する見通しだ。
仮に弾劾裁判でトランプ氏に有罪評決が下されれば、その後に上院の単純過半数で同氏の公職永久追放を可決することが可能だ。憲法専門家によって解釈は異なるが、弾劾を通じた公職永久追放はあくまでも弾劾裁判で有罪となることが前提、との見方が支配的だ。したがって、無罪評決がほぼ確実視されている中、弾劾を通じトランプ氏の2024年大統領選出馬を阻止することはほぼ不可能ということだ。
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