民主党が狙うトランプ前大統領の公職永久追放

弾劾裁判は無罪ほぼ確実も、プランBを実行か

無罪評決となることが分かっていて、弾劾裁判を続行する民主党の真の狙いは何であろうか。民主党は任期終了前に大統領が反乱を扇動するような行為を許せば将来の大統領が同様のことをするリスクがある、と表向きは主張している。

だが、民主党にとっては弾劾裁判によって、反トランプで再び党内団結を強めるメリットがある。また、共和党の内戦を煽ることもできる。トランプ党と化した共和党だが、議事堂乱入事件をきっかけに、トランプ氏退任後は穏健派とトランプ支持派との亀裂が広がっている。弾劾裁判でその亀裂をさらに広げ、共和党弱体化を図ることは可能かもしれない。

さらに民主党は弾劾裁判を通じて、トランプ氏の無罪を訴える共和党議員の全員に対し、反乱扇動やアメリカの民主主義の弱体化に加担しているというレッテルを貼ることができ、次回選挙に向けてこのことを地元有権者にアピールできる。弾劾裁判で無罪評決が出ても、共和党穏健派や無党派層などの世論をわずかでも動かすことができれば、民主党には価値がある。

憲法修正第14条3項でトランプ再選阻止の可能性

一方、弾劾裁判で無罪となっても、トランプ氏を罰するオプションが一部の民主党議員やアメリカ憲法専門家の間で囁かれ始めている。それは憲法修正第14条第3項に基づき、トランプ氏の公職永久追放を狙うオプションだ。

修正第14条第3項は、南北戦争でアメリカ合衆国(北軍)に対抗したアメリカ連合国(南軍)の人物が戦後、公職に就くのを防ぐことを目的に1868年に憲法に追加された条項だ。例えば、アメリカ連合国の唯一の大統領(任期:1862~65年)であったジェファーソン・デイビス氏は、この条項により南北戦争後、生涯、公職に就くことができなかった。

同条項では、憲法支持を宣誓し、公職に就いていた人物が国家に対する暴動や反乱に加わった場合、あるいはアメリカの敵に支援・便宜を与えた場合、上下両院の3分の2により撤回されない限り、再び公職に就くことを禁じている。修正第14条第5項の「適切な立法」で同条を施行できるといった記載に基づき、第3項は単純過半数と大統領署名で成立すると一部専門家は解釈している。

バージニア大学のフィリップ・ゼリコウ歴史学教授は、この解釈に基づき、上下両院で多数派になっている民主党はトランプ氏の公職永久追放を議会で可決することが可能、と主張する。もちろん、議会で可決してもトランプ氏が提訴し司法の判断に委ねられる可能性は大いにある。

なお、憲法第1章第9条第3項では、本来は司法が裁くべきところを、議会が私権剥奪法の可決によって個人の罪を裁くことを禁じている。そのため、専門家の一部は修正第14条第3項を適用すること自体の合憲性を疑問視し、議会は別途、反乱に関わった人物の公職永久追放を定めた法律を整備する必要があると主張する。ここでも最終的には司法で争われ、最高裁まで上ることも想定されるため、トランプ氏の公職永久追放については、数年間は確定しない可能性もある。

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