民主党は「中間選挙の呪い」を解くことができるか アメリカで問われるのはバイデンかトランプか

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「帰宅してくれない招待客」も意気軒昂だ(写真:Bloomberg)

ピュー研究所の世論調査(2022年8月)によるとバイデン氏を「やや不支持」と答えた17%の有権者のうち中間選挙で反対政党の共和党候補者に投票すると回答したのは29%にすぎない。しかし、2010年と2018年では現職大統領を「やや不支持」と答えた有権者のうち3分の2が大統領の反対政党候補者に中間選挙で投票していた(ワシントン・ポスト紙)。

つまり、2022年中間選挙ではバイデン氏を支持していなくても民主党候補に投票する有権者が多い可能性がある。したがって、今回は過去ほど大統領の支持率が中間選挙の行方を占ううえで重要ではないかもしれない。

さらには8月時点のNBCニュースの世論調査では「中間選挙に非常に高い関心がある(10点満点制で9または10)」と答えた共和党支持者は68%であったのに対し、民主党支持者は66%とその差は誤差範囲内の結果となった。3月時点で17ポイント差、5月時点でも8ポイント差と共和党支持者のほうが極めて関心が高かった状況と比べると激変している。

約1カ月強で戦況が大幅に変わった理由は、「ドナルド・トランプ前大統領(Donald Trump)」と「ドブス判決(Dobbs)」の2つのDに対する国民の注目の高まりだ。後者の「ドブス対ジャクソン女性健康機構事件(Dobbs v. Jackson Women's Health Organization)(通称:ドブス判決)」は、人工妊娠中絶の合憲性を認めていた判例を覆した2022年6月の最高裁判決だ。

民主党に追い風となる2D(ドナルドとドブス判決)

「ドナルド・トランプ前大統領」をめぐるFBI(連邦捜査局)などの捜査や中間選挙への関与について連日、同氏に関する報道が絶えない。中間選挙でここまで前大統領に国民が注目するのは前代未聞だ。政治アナリストのチャーリー・クック氏は共和党内でいつまでも影響力を保持している同氏を「帰宅してくれない招待客」と揶揄している。

民主党にとっては「現職大統領の信任投票」であれば厳しい戦いとなるが、「共和党・トランプ氏の信任投票」あるいは「バイデン氏とトランプ氏の比較の選挙」といった闘いなら互角となる可能性があり、そうした構図に切り替えるチャンスが到来した。現職大統領ではなく野党が最大の争点となった中間選挙は1998年以来のことだ。当時は民主党出身のビル・クリントン大統領を弾劾した下院共和党に対し国民が反発し、民主党がむしろ議席数を増やした。

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