民主党は「中間選挙の呪い」を解くことができるか アメリカで問われるのはバイデンかトランプか

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有権者は州知事や上院議員はある程度認知していても、下院議員候補までは知らないケースが多い。したがって、下院選挙ではさざ波程度でも構造的に有利な共和党が多数派に返り咲くことが予想されている。選挙予測などを手掛けるファイブサーティエイト社は9月15日時点、共和党が下院を奪還する確率を71%とみている。

しかし、上院選では状況が異なる。レッドウェーブであれば、その波に乗って誰であっても共和党候補が勝利できるかもしれない。だが、赤いさざ波程度では激戦州で勝利するのは容易ではない。

上院の多数派奪還の行方を左右するアリゾナ、ジョージア、オハイオ、ペンシルベニア(各州の頭文字 A GOP)といった激戦州ではいずれも政治経験がないトランプ支持派が共和党予備選を制したことから、上院を共和党が奪還することはできない可能性も高まっている。

9月15日時点、ファイブサーティエイト社は民主党が上院の多数派を維持する確率を71%とみている。6月1日時点では共和党が上院を奪還する確率を60%とみていたことからも、両党の立場は逆転していることがわかる。

変数が多く予想がつきにくい

とはいえ、中間選挙までまだ約8週間もあり、再び戦況が激変することはありうる。

政治アナリストの見方は多様であるが、共通の認識は今年の中間選挙はこれまでとは違うという点だ。コロナの行方に加え、経済情勢、治安問題、移民問題、前大統領、人工妊娠中絶をめぐる最高裁判決などさまざまな要素が影響する中、現時点では予測不能である。2Dで民主党を支持すると思われる多くの若者の中間選挙への関心度合いが高まったとしても、実際に投票に結びつくかは未知数だ。若者の投票率は伝統的に低く、大統領選と比べ中間選挙の投票率は下がる。

バイデン大統領率いる民主党は2Dで支持は高まったものの、「中間選挙の呪い」を完全に解くことは難しそうだ。バイデン政権もそれを想定してか、次期下院議会を牛耳る公算が大きい共和党からの攻撃に備え、今のうちから防衛態勢を整え始めている。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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