イオンモールが全国制覇を成し遂げた戦略の秘密 「エコシステムの革新」はデジタルのみにあらず
このようなエコシステムの広がりを見落とすと、今日のビジネスでは大きな失敗を免れえない。単独の映画館、単独のブランドショップ、単独のペットショップではイオンモールにとうてい太刀打ちできない。
単体のカメラとして、どれだけ見事に作られても、今日ではマニア層の需要を満たすことしかできない。はたまた漫画やアニメにしたところで、ファンアートや考察の広がり、ツイッターでバズることまで視野に入れなければ、ヒットは難しい時代なのである。
ディスラプション「断絶」とエコシステムの革新
もう1つの、ディスラプションという言葉は、どういう意味なのだろうか。
ディスラプションとは、「断絶」すなわち「非連続な変化」を意味する言葉である。皆さんが聞いたことがあるとすれば、デジタル・ディスラプション、だろうか。デジタル技術の進展により、産業の構造や、顧客体験が非連続的に変化することをデジタル・ディスラプションという。
ZOZOTOWNによる衣類のeコマース販売や、スタディサプリ(スタサプ)によるオンラインでの予備校講義の提供はその典型である。N高もデジタル・ディスラプションであろうし、昨今のメタ(旧フェイスブック)や、テスラが行おうとしているのも、産業のデジタル・ディスラプションであろう。
ビジネス知識の学びに熱心な方であれば、クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』の契機が、ディスラプティブ・イノベーションであったことを思い出されたかもしれない(日本語で「破壊的イノベーション」と翻訳された原語がDisruptive innovationである)。
従来の価値観ではその意義を計れないようなディスラプティブ・イノベーションが起こると、既存の企業は上手に対応できない。たとえば、iPhoneが登場したとき。その価値は、大半の顧客も、通信会社も端末メーカーも、誰も理解できなかった。そういうイノベーションこそが、産業を根底から覆してしまうとしたのが、イノベーションのジレンマである。
クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』から四半世紀を経て、その後継の議論として登場したのが、ロン・アドナーによる『エコシステム・ディスラプション』なのである。
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