イオンモールが全国制覇を成し遂げた戦略の秘密 「エコシステムの革新」はデジタルのみにあらず

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これが、いま世界の経営学界で名をはせる、ロン・アドナーが定義する「エコシステム・ディスラプション戦略」である。

本稿では、エコシステム・ディスラプション戦略を解説し、その視座からイオンモールの成功を読み解いていく。そこから、皆さんのビジネスにどうエコシステム・ディスラプションの発想を、イオンモールから学べるヒントを生かしていけばよいかを、議論していきたい。

顧客に総合的な価値を提供する「エコシステム」

唐突に「エコシステム・ディスラプション」と言われても、何のことだかさっぱりだろう。順番に、その言葉の意味を解説していきたい。

まず「エコシステム」とは、そのまま訳せば「生態系」のことである。生き物たちが、互いに依存し合いながら織りなす構造のこと。転じて、経営学では、顧客や企業が、何らかの目的のもとに集まって、相互に価値のやり取りをするまとまりのことを指す。

たとえば、「写真」のエコシステム。今日では、端末で撮影し、クラウドに保存し、アプリで編集し、SNSでシェアするところまでを含めて顧客の価値となっており、これを提供するために、スマートフォン端末、クラウド保存サービス、編集アプリ、SNSが相互に連携し合っている。私たちはそこに生態系を見いだすことができるのだ。

出所:ロン・アドナー『エコシステム・ディスラプション』p.67

この「エコシステム」の観点で世の中を見渡すと、確かにあらゆるものが今日では「エコシステム」として提案されている。自動車にも、ディーラー、保険サービス、ローン、あるいはユーザーコミュニティーなどが織りなすエコシステムが存在している。

漫画やアニメだって、pixivでファンアートを楽しんだり、YouTubeで考察を見たり、SNSで感想を語り合ったりして、その消費体験は単体のマンガやアニメにとどまらない。

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