安倍氏国葬の水面下で動く「後継選び」複雑な思惑 来年の衆院山口4区補選をめぐる駆け引き

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こうした状況の中、自民県連内ではここにきて、「身内の有力な後継候補が居なければ、地元の安倍系地方議員をショートリリーフで擁立するか、あえて誰も出さないという選択肢もある」(幹部)との声が出始めているとされる。

「今回後継問題で大混乱するより、新選挙区になった段階で決着をつけたほうがよい」(同)というわけだ。ただその場合、「林氏が地盤奪還のため、新選挙区で出馬するのは確実」(同)との見方が支配的。林氏の後援会幹部も「安倍氏の身内以外の後継候補なら、林氏は必ず本来の地盤となる新選挙区から出る」と明言する。

新3選挙区は林、岸、高村3氏の分け合いが自然だが…

そもそも、「10増10減」案が10月3日召集予定の次期臨時国会で成立すれば、山口県は3つの新選挙区を「衆院現職の林、岸両氏と高村正大氏(前財務政務官)が分け合うのが政治的には自然の成り行き」(自民選対)となる。ただ、「その場合は長年の安倍家の地盤を自動的に林氏に奪われることになり、洋子氏が黙っていない」(安倍家関係者)との声も広がる。

安倍氏の国葬は9月27日。「それまでは“忌中”を理由に、表立って後継者問題を論じるわけにはいかない」(安倍派幹部)とされる。逆に言えば、「国葬終了後は後継者選びが一気に本格化する」(同)ことにもなる。

「9・27国葬」については、安倍氏と旧統一教会の“関わり”が絡んで、なお反対論が拡大し続けている。しかも、次期臨時国会は「旧統一教会国会」となるのが確実で、安倍氏への批判も収まりそうもない。

それだけに、「当分、政治の表舞台では安倍氏の後継選びを論じにくい状況」(自民幹部)となるのは避けられない。ただ、「当面、後継選びのタイムリミットは年明け前後」(同)とみる向きが多く、自民党内の調整は「土壇場まで混乱必至」(党選対)との見方が支配的だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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