東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の鉄道混雑率(乗車定員に対する輸送人員の割合)を見ると、新型コロナウイルスの流行前は160%前後だったが、2021年度は108%だった。これは通勤・通学する人がそれだけ減ったことを主に意味する。働き方改革でリモートワークが増える中で、出勤頻度が減り、鉄道混雑率が急減した。
主に通勤が減ることにより、都市圏に住み続ける意味が薄れてきているのも事実である。東京圏のマンション価格はアベノミクス前の1.7倍になっているし、新築分譲戸建てもコロナ後に約1割値上がりしており、持ち家取得のハードルも高くなっている。通勤が減り、持ち家取得もままならない都市圏に見切りをつけ、郊外や地方に引っ越すのは理解できる。今の仕事が継続できるなら、住む場所は自由に選べるようになっているのだ。
では今後、東京圏から地方への移住が進むのか。筆者は、コロナ後の人の移動はコロナ以前の状態に近づいていくことになると考えている。
コロナ禍でも東京圏は転入超過
実際、コロナ禍においても東京圏への転入超過は続いている。住民基本台帳人口移動報告によると、2021年は8万1699人の転入超過だった。前年に比べ1万7544人の縮小したものの、転入超過が続いていることに変わりはない。
なぜか。移住する最大の理由は「仕事がそこにあるから」にほかならない。都市圏にオフィスを持つ企業が新卒社員を大量採用するのはその代表例だ。このため、有効求人倍率が高いエリアに人は流れる傾向となる。
地方には仕事の種類も求人数も少ない。これに対して、都市にはさまざまな仕事があり、求人の数が多い。例えば、専門性のある金融の仕事は東京が中心だ。仕事があればそこに住んで家賃を払うことができる。だからこそ、移住には仕事があることが大前提条件になるのだ。
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