イージス・システム搭載艦が自衛隊を弱らせる訳 建造強行なら防衛費を浪費させ人的負担も増える

✎ 1〜 ✎ 53 ✎ 54 ✎ 55 ✎ 最新
拡大
縮小

SPY-6はすでにアメリカ海軍の要求性能を満たすためにハワイで弾道ミサイルと巡航ミサイルの同時探知・追尾の試験を実施し、成功している。計15回に及ぶ試験費用は15億ドル(約1600億円)とされる。先述のようにSPY-6は、アメリカ海軍が次期イージス艦用に採用したレーダーで、試験費用はアメリカ政府が負担する。SPY-7に関してはそのような費用はわが国が独自で負担することとなる。

しかも現時点では「イージス・システム搭載艦」の調達計画は2隻、つまりアショア分のSPY-7分だけだ。アメリカ海軍含めて何十隻分も調達されるSPY-6と比べて1隻あたりのコストは膨大なものとなる。

SPY-6はアメリカ海軍が大量に採用するため開発費やコンポーネントのコストも低減できるだろう。さらに大変厳しいアメリカの会計検査院の監視や、アメリカ議会の監視もあるのでコストの低減は抑えられるだろう。ところがSPY-7の場合はそのような監視が付かないのでメーカーの言い値で払うことになる。それを検証することは防衛省にはほぼ無理だ。

「浮かぶミサイル基地」になる?

「イージス・システム搭載艦」は排水量からいえば、現在海自最大の護衛艦で、事実上のヘリ空母である「いずも」級DDH(ヘリコプター護衛艦)に匹敵する。対して110名という乗員数は海自のイージス艦の3分の1にすぎない。

おそらくはミサイル防衛に特化した「浮かぶミサイル基地」となるだろう。ミサイルの垂直発射機の数は通常のイージス艦よりも多くなり、昔アメリカ海軍が構想していた「アーセナルシップ」に近いものになるだろう。

だが人員の面からみても、通常の駆逐艦などの水上戦闘艦としての自己完結した機能は持てないはずだ。例えば主砲や対潜用のソナーや防御兵器などはほとんど搭載できまい。

そうであれば「護衛艦」によるエスコートが常に必要となる。いずも級の開発コンセプトは「守る艦から守られる艦へ」だったが、「イージス・システム搭載艦」も同じことになる。

次ページ調達コストや維持費は?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT