浜田靖一防衛相は、「イージス・システム搭載艦」の導入によって、既存のイージス艦をミサイル防衛任務から解放し、沖縄県など南西諸島有事への対処能力強化に充てることが可能になると主張しているが、むしろ海自の負担を増やすことになるだろう。
海上自衛隊は次世代のイージス艦にはアメリカ海軍と同じレーダーの「SPY-6」を採用する予定だ。であればSPY-7を搭載した「イージス・システム搭載艦」と2種類のイージス・システムを搭載した艦種が混在して、調達コスト、訓練、その他の費用で大きな負担となる。
SPY-7を導入した際には、わが国独自でイージス・システムを作ることになり、巨額な試験費用やソフトウェア維持管理費用の負担が必要になる。また定期的に行われる能力向上のアップデートについても自前で負担して、相当の費用がかかる。
現在の兵器システムは一定期間に近代化を行う。これは陳腐化を防ぐためではなく、部品の枯渇対策でもある。多くの民生品や汎用品は10年も20年も生産されない。部品が枯渇すれば代用部品が必要となるが、その際にはソフトウェアの更新も必要だ。それを全部自前で賄う必要が出てくる。
SPY-7はイージス・システムの試験を経ていない
アメリカはニュージャージー州モアーズタウンにCSEDS(Combat System Engineering Development Site)というイージス・システムのテストセンターを有している。アメリカ海軍のイージス・システムの構成品及び接続システムはすべてこの施設で試験され、その試験に合格する必要があるが、SPY-7はその試験を経ていない。
さらに申せば海上自衛隊は保有する艦艇の戦闘指揮システムの維持管理のために艦艇開発隊に各システムのテストサイトが存在する。これは建設に約100億円かかっているが、SPY-7を採用するならば同様の施設の建設も必要となる。
そもそもSPY-7は「イージス・システム搭載艦」のためのレーダーではなく地上配備型ミッドコース防衛対弾道ミサイルシステム用として開発されたものであり、SPY-7はその試験を経ていない。
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