終わって、玄関から、門まで見送る私に、大亀老師が言った一言がいまなお、私の耳に残っている。「あんた、松下さんは、偉い人やな。あんな偉い人はいない」。それ以降、大亀老師は、松下を誉めることはあっても、批判することはなかった。
批判者が応援者になる、松下流の人心掌握法
朝日新聞のK氏も、松下批判をする人であったが、松下が、声をかけて、同じように自分の問題点、欠点を教えてほしいと直接、話を求めた。この人も、帰るとき、私に「松下さんは、凄いね」。
ともかく、松下幸之助は、自分を批判する人を遠ざけるのではなく、むしろ、呼んで批判を大いにさせた。結果、批判者が応援者になった。これが松下流の人心掌握法かと感心した。批判者を遠ざけるのではなく、むしろ、直接、丁寧に批判を聞く。そして、その批判を聞き流すのではなく、しっかりと受け止め、納得のいくことは素直に、みずから改める努力をしていた。
松下は、私が経営者になってから、時折、こう言っていた。
「きみな、一生懸命、経営をして成果を上げているけど、自分で気づかん問題点もいっぱいあるわ。だから、いろいろ批判する人も出てくるけど、そういう人を大事にせんとあかんよ。部下でも同じことや。周囲は、ええことばかり、きみのご機嫌をとるようなことばかり言うわ。まあ、すすんで、経営者、指導者に、諫言してくれる部下とか、直言してくれる人を大事にせんとな。家康も、主君に対する諫言は、一番槍より値打ちがあると言うてるやろ。あんた、こういうことに気を付けないとあきませんよ、こういうところは直さんとあきませんよ、というそういうことを言ってくれる人を、意識して大事にするということやね」
松下幸之助という人は、さまざまな批判を素直に受け止めながら、それによって成功したと言えるかもしれない。
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