幸之助は、「厳しく批判する人」を大事にした 「批判してくれる人は大事にせんとあかん」

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私は、どうなるものやら、と案じつつ、食事に加わったが、老師が突然に、「松下君、立ちなさい」。

松下が立つと、いきなり、その背中をトンと叩いて「あんたは、姿勢が悪い。しゃんとしないとあかん。背筋を伸ばしなさい」と一喝する。松下は、笑顔で「姿勢があきまへんか」と言って、自分で、背を後ろに伸ばした。「そうそう、松下君、そういう姿勢を心掛けんと」。

次々に「松下幸之助批判」を展開

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歳は松下より5歳若かったので、君付けはないだろう、と私は、思っていたが、松下は、気にとめることもなく、「大亀さん」あるいは「ご老師」と言っていた。食事が始まると、松下が笑顔で、

「ご老師、私もね、このごろ、まあ、こういう立場ですからな、あんまり周囲のもんが、なにも言うてくれませんのや。それでね、今日、ご老師においでいただいたんは、なんか、私に注意すべきこととかね、あれはあかんとか、こういうことをせんといかんとかね、そういうことがあったら、教えてほしいと思いましてね」

と言う。傍らにいた私は、呆気にとられた。あれほど、ひどく松下の批判をしているのを知っているのに、と思った。

すると、ここを先途(せんど)とばかり、大亀老師は次々に松下を前に、「松下幸之助批判」を始めた。松下は、

「なるほど、そういうところ、私もは気ぃつけんといけませんな」「そういうことは、これから注意しますわ」。

1時間ほど、松下批判をする大亀老師、「なるほど」と聞く松下。「まあ、松下君、そういうことだ」と大亀老師の話が終わったところで、松下が「いや、まだ、ありませんか」と言う。大亀老師が話す。と、松下が、「なお、ありませんか。ご老師の話は大変参考になりますわ」。

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