「徳がないと、部下はついてこないな」

経営者は努めて徳性を高める努力を

昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

経営者、指導者は、社員の納得する事業計画を精密に立て、規則を明確にし、組織を整えるだけでは、経営を進めていくことはできない。

ここに書いてあるだろう、あのとき、諸君も同意しただろう、と言っても、経営者の思いは空回り。期が終わってみれば、最悪の数字。経営者の思うほどに、部下や社員は動いていない。まさに、笛吹けども踊らず。なぜ、社員は、部下は、オレの指示を聞かないんだ、どうして言った通りのことをしないんだ、どうして結果を出さないんだ、と腹立たしく、そこで、外で、愚痴を言う。

「ウチの社員は、部下は、程度がよくなくて」、「わが社には、出来のいい社員はいないんですよ」、そして、社内でも「お前たちのような出来の悪い社員はいない!」「的確な計画を、お前たちも納得したんじゃないか!」。

理論や知力以上に必要なもの

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指導者、経営者が、考えなければならないのは、正しいことを示したら、人は動く、社員は、部下は、自分についてくる、と思わないことだ。知力も、理論も、力も必要だが、それ以上に「徳」が必要だということである。

人間の心は、理と情の組み合わせでできている。だから、理ばかり、力づくでも、うまくいかない、人がついてこないのは当たり前である。いや、むしろ、多くの人間は、情のある、徳のある人に魅かれて、命がけで働こうとするのではないだろうか。

産業心理学の講義で、賃金は高いが、人間的魅力、徳のない親方と、賃金は安いが、人間的に魅力のある、徳のある親方と、そのどちらを自由労務者が選択するかというと、圧倒的に、日当が安いが、魅力のある、人徳のある親方を選んだ、ということを学んだ記憶がある。

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