「住まいの暖かさと健康」の意外と侮れない関係性 断熱性に優れた家のほうが在宅ワークも捗る

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ここで、住まいと健康の関連性について、科学的な根拠に基づき事業を行っている事例を紹介する。福岡市に本社がある芙蓉ディベロップメント(芙蓉ホーム)は8月1日に「健康寿命延伸住宅」を発売した。

高気密・高断熱化住宅に「健康管理システム」を組み合わせているのが大きな特徴となっている。

同システムは、全国の医療機関や介護施設で患者や高齢者などの症状重度化防止に実績がある。居住者が体温計や血圧計などを使い、日々の数値を記録。ICT技術を用い管理し、蓄積されるデータの変化から、AIが体調の異常を検知した際には、居住者に通知するというものだ。

芙蓉ホームが導入する健康管理システムで使用される機器(筆者撮影)

蓄積されたデータは医師に提示することで疾患の早期発見に役立てられる。食事や運動の管理や月次のレポートを作成、提示することで、より健康的な暮らしを可能にするための行動変容も促すとしている。

課題があるとすれば、居住者が自ら毎日体温計などで確認し、数値を入力しなければならないことだろうか。

つまり、三日坊主的な人では宝の持ち腐れになる懸念もある。とはいえ、医療機関などと連携できるというのは画期的だ。

住まいが居住者の健康状態を確認する時代へ

そうした課題の解消に向けたシステム開発を進めている事業者も存在する。脳卒中や心筋梗塞などを発症した居住者に対して、早期に発見し救急対応するネットワーク「HED-Net」を開発、検証している積水ハウスだ。

具体的には、住宅内に設置されたセンサーによって居住者の状態を非接触で検知・解析し、スピーカーでの呼びかけに反応しない場合には、救急車を手配し、さらに解錠・施錠などを行うというものである。

センサーやAIなどを含むICT技術の発展がなせる技であり、今後の「住まいと健康」のあり方を予感させる取り組みで、すでに実証実験も行われているといい、本格的な運用が強く期待される。

最後に、これから住宅取得を行う方へ筆者から提言がある。断熱性能が高い暖かい住まい、さらには各種の健康サービスを採り入れることも大切だが、将来、身体機能が衰えた際に暮らしやすくする間取りや動線への配慮も検討することをお勧めする。

要は、在宅医療や介護を受けやすい、あるいはサービス提供をしやすい住まいとするわけだ。住宅取得は、子育てなど、そのときのニーズを重視しがちだが、そうした観点を持っていると、より長く安心、健康に暮らせる住宅を得ることにつながるはずだ。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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