「住まいの暖かさと健康」の意外と侮れない関係性 断熱性に優れた家のほうが在宅ワークも捗る
ここまでは主に高齢者を中心とした居住者にとっての「暖かい家」の健康メリットだが、若い世代にもメリットがあるということも確認されたという。その1つが在宅ワークについてだ。
1980(昭和55)年の省エネ基準による住宅(断熱等級2)と、2016年からの現行基準の住宅(等級4)、それ以上の断熱性能がある住宅(等級6:今後設けられる基準)の比較で、等級6と等級4の住宅に住む人の作業効率が等級2を大きく上回ったとしている。
暖かく適度な湿度がある住宅は、子どもの健康にもいい効果があることがわかってきたという。
「かび臭く寒い住宅」では、それに比べてアレルギー性鼻炎で1.8倍、アトピー性皮膚炎で1.7倍、ぜんそくで0.4倍の発症があったと報告されている。
また、足下まで暖かくできる断熱性能が高い住宅であればあるほど、月経前症候群や月経痛の軽減などといった、女性特有の健康上の悩みも改善される可能性があるということも確認されたとしている。
全館空調の効果についても言及されている。居室内の環境をより快適にコントロールできるとされるものだが、睡眠や血圧について個別のエアコンを使っているケースに比べより良好な状態になっていたとしている。
暖かい住まいは介護予防にも効果がある
高齢者の介護予防についても触れられている。暖かな住まいに住む人(冬季の居間の平均室温17.0℃)の要介護認定推定年齢は平均80.7歳で、寒い住まい(同14.7℃)に住む人のそれは77.8歳となっていたとしている。
近年、「健康寿命」という言葉がよく使われるようになってきた。これは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義されているが、暖かな住宅はその健康寿命の延長に効果があると見られるわけである。
ところで、なぜ住まいと健康について科学的な根拠に基づく検証が進められているのだろうか。
前述した断熱性の低い住宅を減らすだけでなく、今後、医療・介護の主となる在宅での対応をしやすい環境づくりを促すという目的がある。
日本は「人生100年時代」に入り、今後は社会保障費や、医療や介護の人的な資源を有効活用するために、住まいの役割がより重要度を増すと考えられている状況なのだ。
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