「やる気エンジンを動かすにはほめる」が納得の訳 やりたい気持ち「内発的モチベーション」を誘導

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言葉としておかしいかもしれませんが、「やる前からやめる」のではなく、「やってみて徒労感しか残らないようならやめる」ことが大切です。

でも、そのイヤなことも、経験として将来どんな役に立つかわからないので、まずはやってみることが大切だと思います。「とりあえずやってみる」という習慣を身に付けることがポイントなのです。

モチベーションには2種類ある

モチベーションには、「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」があるといわれています。

前者は、好奇心、探求心、向上心など、「やりたいからやる」という気持ちです。対して、後者は、「お金や評価がもらえるから、がんばる」という気持ちです。がんばった自分に自分でご褒美を与えることで、脳の報酬系を活発化させるわけです。

「外発的モチベーション」も“やる気”を向上させますが、「内発的モチベーション」をいかにして作ることができるかもポイントになります。

私の友人のライターさんは、得意ジャンルのある書き手ですが、あえて専門性を設けずにフリーランスとして活躍しています。その人は、門外漢の分野の執筆依頼や取材であっても、やはり「とりあえずやってみる」ことを大事にしているそうです。さらには、次の3つの軸を念頭に置いているといいます。

・スキルになる仕事 取材力、筆致力が向上し、視野が広がるような仕事
・稼げる仕事 単価の高い仕事
・ラクな仕事 単価は安くても労力のかからない仕事

この3つのどれかに当てはまるなら、「とりあえずやってみても損はないだろう」と考えているというから面白いですよね。このように割り切ることは、徒労感を覚えないように、自分でアレンジしながら脳と付き合っているともいえます。

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「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」、どちらも兼ね備えた仕事への取り組み方もおすすめポイントです。
しかも、そのライターさんは、何でもやってきた結果、仕事の幅が広がり、「どんどん仕事が楽しくなる」と語っています。

好き嫌いという軸で考えると、もしかしたらものすごく自分と相性のいいもの、新しい出会いになったかもしれないことを見逃してしまう可能性だってあります。繰り返しますが、「こだわり・好き嫌い・苦手意識」というのは自分にバイアスがかかっているだけです。

新しい価値基準をつくってしまえば、脳はそこに向かって伝達物質を送り続けてくれます。「とりあえずやってみる」。そして、報酬系を働かせられるような軸を作ってみる。それこそが、思いもよらない新しい自分の発見につながるのです。

堀田 秀吾 明治大学教授

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ほった しゅうご / Syugo Hotta

言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了。言葉とコミュニケーションをテーマに、言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を融合した研究を展開。熱血指導と画期的な授業スタイルが支持され、「明治一受けたい授業」にも選出される。研究の一方で「学びとエンターテインメントの融合」をライフワークとし、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書等を多数執筆、テレビ番組「ワイド! スクランブル」のレギュラー・コメンテーター、「世界一受けたい授業」「Rの法則」などにも出演する等、多岐にわたる活動を展開している。

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