モデルナvs.ファイザー、ワクチン訴訟のゆくえは 「先端医薬ベンチャー」業界地図で際立つ存在感

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そのため、仮にモデルナの訴えが認められ、今後ファイザーのワクチン収入から一定料率のロイヤルティを徴収することになったとしても、その金額はわずかなものにとどまると考えられる。

そのため今回の訴訟からは、今後の次世代ワクチン・新薬開発のベースとなる独自のmRNA技術に関連する特許を死守したい、という思惑が透けて見える。

注目の国内勢は?

こうした海外勢の隆盛を尻目に、日本でも創薬ベンチャーが勃興している。

たとえば、2006年創業のペプチドリーム(4587)は「特殊ペプチド」を自在に作る独自技術を持つ。薬の候補ではなく、この技術を使った薬の開発ノウハウそのものを武田薬品工業や塩野義製薬など大手メーカーに供与することで収入を得ている。

創薬の分野では、JCRファーマ(4552)に注目できる。脳に薬剤を届ける独自技術を活用した難病の新薬を2021年に発売した。これまでジェネリック薬などを手がけてきた同社だったが、この技術を活用した次の製品開発も進めている。

ペプチドリームやJCRファーマは黒字企業だが、赤字が続くベンチャーの中には、新しく株式を発行する増資を行うことによって、研究開発費や成長投資の資金を賄っているケースが少なくない。

直近では大阪大学発ベンチャーのアンジェス(4563)は2020年12月に約270億円、2021年3月に約170億円の増資を行っている。欧米勢でも、2019年に設立され遺伝子治療を手がけるアメリカのブリッジバイオ・ファーマが2021年1月に6.5億ドルの増資を行っている。

だが、増資に頼るビジネスモデルがうまくいき続ける保証はない。

アンジェスは新型コロナワクチンの開発を中止し、株価は2021年初めから8割安い水準にある。また、ブリッジバイオも、開発薬の有効性が確認できず株価は急落。2021年3月の高値から8割下落している。

欧米勢ではブリッジバイオだけでなく、各国の金融引き締めによってナスダックやニューヨーク株式市場に上場している創薬ベンチャーの株価は軒並み軟調だ。

開発失敗や金融引き締めによって株価の低迷が長引けば、研究開発費の調達に困難を来す創薬ベンチャーも出てくるだろう。コロナ禍で成功を手にした企業がある一方で、冬の時代が目前に迫っている可能性にも留意すべきだ。

次ページこれが先端医薬ベンチャーの業界地図だ
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