モデルナvs.ファイザー、ワクチン訴訟のゆくえは 「先端医薬ベンチャー」業界地図で際立つ存在感

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開発には10年以上かかることもザラで、その間の売り上げは見込めない。そのためこうしたビジネスモデルでは赤字の期間が長く続きがちだ。

国内外の創薬ベンチャーを一覧にした「先端医薬ベンチャー」の業界地図を見れば、欧米の有力ベンチャーの多くは売り上げがほとんどないにもかかわらず、数百億円レベルの赤字を出していることがわかる。これは、将来大きな収益を得るために多額の研究開発費を先行投資しているとみることができる。

絵に描いたような急成長の業績

一方、“当たればデカい”のが、こうした研究開発費先行型の創薬ベンチャーの特徴だ。それはモデルナの決算が如実に物語っている。

2016年に創業したモデルナは、2020年末にアメリカでコロナワクチンが承認されるまで製品売上高はほぼゼロ。にもかかわらず、研究開発投資を惜しみなく続け、22億ドルもの累積営業赤字を積み上げてきた。

しかしコロナワクチンの出荷が始まると業容は一変する。同社の決算は、2020年の売上高8億ドル、営業損失7.6億ドルから、2021年には売上高が約185億ドル(約2兆4000億円)、営業利益は約132億ドル(約1兆7300億円)と劇的な成長を遂げた。(下図)

とくに営業利益率は驚異の70%超を誇る。これは各国政府がワクチンの買い上げを主導したため、一般的な医薬品メーカーでは収益を圧迫する営業費用などがほとんどかからないことも、高収益につながっている要因だ。

過去に積み上げた22億ドルの累積赤字を一掃したほか、さらに現在は、得た資金をインフルエンザワクチンやがんの治療薬開発に投下するという好循環を生み出している。

絶好調のモデルナだが、今回の訴訟で、実はファイザーワクチンの販売差し止めを求めてはいない。また、92の低中所得国での販売や、先進国においても2022年3月以前の販売について損害賠償は求めないとしている。

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