赤字だった市立川西病院が劇的な変身を遂げた訳 存続すら危ぶまれたが総合医療センターとして再生

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縮小

さらにこの合併による公立病院の再編は、2つ以上の病院が合併することで、その地域の地域医療構想に沿った、急性期病床を1割削減することになる。通常は地方交付税交付金が25%出るところを、さらに拡大されて40%が補助金として出る。協和会の北川理事長は、このしくみなら市立川西病院と協立病院の統合再編が可能になるのではないかと考えたという。

協和会からの提案に、川西市は両手を挙げて同意する。すでに毎年の補助金や、貸付などの支援が限界状況にあった川西市は、「市の経営形態の抜本的な見直しを行う指定管理者制度の導入と、市立川西病院と協立病院の再編統合を行う計画が公立病院を運営する唯一の選択肢と判断した」と、川西市健康医療部の作田哲也部長は同意の理由を述べた。

川西市は費用負担なく協和会もリスク少ない

川西市にとっては、整備費用は市立川西病院の建て替えに必要な財源である地方債の発行許可が国から得られるとともに、国からの財政支援がこのスキームにより拡充される。総合医療センターの整備に係る財源は市が全額地方債で賄い、その返済は指定管理者である医療法人協和会と折半である。

市が負担する50%のうち40%は国からの財政支援(地方交付税)を受けることができ、実質的な市の負担は10%に収まるというわけだ。運営費用は運営を行う指定管理者である協和会がまかなうため、市にかかる費用負担は無い。

一方、協和会にしても総事業費の50%を負担しても自力ですべて建設するよりリスクは少なくすむ。

こうして市立川西病院は、協和会協立病院と共に、経営破綻の崖っ淵から一気に総合医療センターへと再建への舵を切ったのである。

ただ解決すべき問題も山ほどあった。北部地区にあった市立川西病院の移転で、北部の病院が無くなるため、病院を残しておいてほしいという市民の強い要望があった。川西市の北には川西能勢口を始発とする能勢電鉄に沿って兵庫県の猪名川町、大阪府の能勢町と豊能町があり、猪名川町には慢性期医療の病院が2病院あり、豊能町、能勢町には病院は無い。

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