赤字だった市立川西病院が劇的な変身を遂げた訳 存続すら危ぶまれたが総合医療センターとして再生

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川西市の主な病院の位置

このままでは病院の存続すら危ない。そこで、赤字が続く市立病院の経営を早急に立て直す必要があることから、民間的経営手法を活用した指定管理者制度を導入。2019年4月1日から市立川西病院は、医療法人協和会が指定管理者として運営にあたっている。

自力再建難しく、指定管理者の医療法人からの提案が

医療法人協和会協立病院は、1980年に大阪大学医学部の医師を中心に市街地に近い阪急川西能勢口駅近くに設立された民間病院である。協和会は川西市を中心に西宮市や大阪府に6つの病院と4つの介護老人保健施設を持ち、また大阪重粒子線センターを民間事業者として委託を受けるなど、関西では比較的大きな医療法人だ。『週刊東洋経済』2022年2月19日号の「病院サバイバル」特集の医療法人売上高ランキングでも17位という優良経営病院である。

協立病院
川西市を中心に展開する協立病院

実は指定管理者となった協和会の協立病院も、建物はすでに築40年が経過しており、耐震基準を満たすために隣接する新しく開発されたキセラ地区へ新病院の建て替えを検討し、民間事業者としてすでに選定を受けていた。

ところがその後に出された「市立川西病院経営健全化計画」を見て、協和会の北川透理事長は「市立川西病院が存続するためには指定管理者は必要だが、現在の立地条件がよくない北部地域にそのまま新病院を建てても、医師やスタッフの確保などの面から、新たな指定管理者は出てこないだろう。このままでは市立川西病院は存続できなくなるのでは」と危機感を持った。

そこで、協和会の北川理事長は再建の方法を考えた。そしてある提案を川西市に文書で出した。それは、協和会が建て替えを計画していた市街地近くのキセラ地区に、市立川西病院と医療法人協和会協立病院を統合して移転をするという、大胆な計画だった。

協和会協立病院の北川理理事長
協和会の北川透理事長

兵庫県でも病院の統合再編が何件か行われてきたが、いずれも公的病院や大きな企業の病院と公立病院のケースがほとんどだった。いわゆる民間病院と公立病院の合併というのは全国でも初めてか、極めて珍しいケースだという。民間の医療法人が指定管理者になる事はよくある話だが、公立病院との合併はなかった。それもそのはずで、北川理事長に言わせると「民間病院としては最終的には自分の病院がなくなるわけで、普通の考え方ではなかなか手を挙げることはできないと思います」。

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