労働者の6割が健康診断「異常あり」の深刻な事態 しかも「要再検査を放置している人」が約半数も

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なお、定期健康診断結果報告は健診の実施者数と有所見者数を報告することになっているが、性別、年齢を記載するようになっていないため、年齢別の有所見率や年齢調整した有所見率を算出することはできない。

一方で、こんな意見もある。

厚労省のがん検診に関する検討会などで構成員を務めている医師で、公益財団法人福井県健康管理協会(福井市)の松田一夫副理事長・がん検診事業部長は、「有所見率の年次推移は意味があるのかもしれない。ただし、労働安全衛生法に基づく職場の健診の有所見率は、判定する医師のばらつきが大きいと思う」と指摘する。

3人に1人が血中脂質の異常

検査項目別の有所見率では、血中脂質が33.0%と最も高く、次いで血圧が17.8%、肝機能が16.6%だった 。

遺伝的な要素や体質だけでなく、食習慣、運動不足、肥満などが影響しているとみられる検査項目が有所見率の上位となり、それぞれ上昇している。こちらについて前出の神谷氏は、「血圧や脂質、血糖、肝機能、心電図で有所見率が徐々に増加しているので、生活習慣病やその予備軍が増加していることが読み取れる。これも、先ほど指摘したように、受診者の年齢の影響を受けるので、単純に、『生活習慣病が増加した』と結論づけることはできない」という。

貧血も徐々に増加しているが、その理由はよくわからないという。そのうえで、「定期健康診断で貧血を認める方の多くは閉経前女性なので、受診者の女性比率の上昇、つまり就業人口に占める女性の割合が増えている可能性がある」と考察する。

かつて地域産業保健センターからの委嘱で複数企業の産業医をしていた千葉大学予防医学センター(千葉市)の坂部貢特任教授は、職場の健診で血圧測定する受診者からよく聞く言葉として、「健診で測定すると血圧は高くなるが、自宅でリラックスして測るとこれほど高くならない」という言葉を挙げ、これには意外なリスクが潜んでいると指摘する。

医療環境下で血圧が高くなる、いわゆる「白衣高血圧」の人は、早朝高血圧や夜間高血圧が生じているケースもあり、常に血圧レベルの高い人と同じように、脳卒中などを発症するリスクを抱えているというのだ。

貧血については、現行はヘモグロビンの数値が中心になっていて、鉄分やフェリチンなどが足りなくなる、いわゆる“隠れ貧血”を見つけ出せていないケースがあることにも注意が必要だという。 

健診内容全体について、前出の松田氏は「健診項目で最も意味があると世界的に認められているのは、肥満度と血圧、および血糖値のみ」と指摘。また、「職場の健診では、空腹時ではなく午後(食後)にも行われていると思うので、とりわけ、血中脂質や血糖値の判定には疑問が残る」とし、こうアドバイスする。

「(健診は)空腹時に限り、この3つの項目に絞って、医師の判定ではなく、BMI(Body Mass Index:体格指数)、2回実施する血圧測定の平均値、内服薬の有無、空腹時血糖値、あるいは過去1~2カ月間の血糖値を示すHbA1c値のみで比較することで、意味があるかもしれない。医師の判断だけでなく、数値で判断したほうがいいだろう」

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