労働者の6割が健康診断「異常あり」の深刻な事態 しかも「要再検査を放置している人」が約半数も

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定期健康診断実施結果では、業種別の有所見率もわかる。

最も高かったのは「石炭鉱業」で88.9%。次いで「土石採取」(78.3%)、「道路旅客」(74.9%)となった一方で、最も低いのが48.1%の「鉄道等」で、「他の運輸」(51.3%)、「輸送機械」(52.3%)の順番だ(下の図)。

業種別の有所見率
厚生労働省「定期健康診断実施結果報告」をもとにメディカル・データ・ビジョン作成

これについて坂部氏は、過去の産業医の経験も踏まえ、「当時はほぼ同年代で比較すると、IT関連企業の研究職の有所見率は低い傾向、トラックなど運輸、物流関係の有所見率は高い傾向だった」と指摘する。

建設業の「土木工事」の有所見率は70.9%、「建築工事」は61.9%と、上位3位には入っていないが、高い水準だ。

等潤病院(東京都足立区)などを運営する社会医療法人社団慈生会の伊藤雅史理事長は、医師として外来診療や手術をするかたわら、同院に併設する健診センター等潤で、健診受診者の判定もしている。

「当院のある地域の特性で建設業に従事する人を多く診ているが、有所見で要再検査などと判定するケースは少なくない。建設業は力仕事のストレスを発散するためか、酒を飲み過ぎたり塩分を取り過ぎたりするなど、食生活を起点にした生活習慣病の予備軍が散見される」と話す。

受けっぱなしにしない現場の工夫も

有所見者が自主的に医療機関に行くのが望ましいが、職場などから再検査や治療を受けるようよう促されても、働き盛りの世代は忙しいことを理由に健康管理を後回しにするので、病気を早期発見できなかったり、治療のタイミングを逃したりしてしまう。

有所見となった人が実際にどの程度、再検査や治療を受けたかといったデータの最新のものは見当たらず、厚労省がまとめた2012年「労働者健康状況調査」にまでさかのぼらなくてはならない。

この調査によると定期健康診断で「所見ありと通知された人」を100.0%とすると、「要再検査または要治療の指摘があった人」が75.0%、そのうち「再検査または治療を受けた人」が48.3%、「再検査または治療を受けなかった人」が26.7%だった。

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