深化と探索には「野球とサッカー」ほどの差がある 日本企業が探索とスケーリングに不得手な理由

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入山:野球はインターバルがあるので、じっくり考える時間もありますね。

冨山和彦(とやま かずひこ)/株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長。1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学MBA、司法試験合格。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。2007年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。共著に『2025年日本経済再生政策』などがある(撮影:尾形文繁)

冨山:一方、サッカーはそうはいかない。その瞬間の判断で、誰が駆け出したか、誰がシュートを蹴るか、蹴らないか。ある瞬間で決まる。そうすると、コーチや監督は何もやりようがなく、ただ見ているしかない。

両利きの経営における探索領域が、デジタル関連のアジャイル型事業だとすると、その経営の本質はまさにサッカー型です。日本企業の従来の文化のままで、アジャイルをやろうとすると、野球型でサッカーをすることになる。

入山:サッカーなのに、グローブを持って、サインを見ながらボールを蹴るような状況ですね(笑)。

冨山:そのとおりで、パスが来て、シュートを打つかどうか監督を見ていては、うまくできない。部長や課長が会社の命運を左右するような意思決定をするのが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)でよく言われるアジャイルです。現場の人たちにそれだけのレベルの判断能力を身につけさせておかないといけないので、まさに文化の話になってきます。

文化を言い訳にしてはいけない

入山:私も僭越ながら、企業文化の話は、講演などでしつこく話しています。というのも、「入山先生、イノベーションとか、両利きの経営とか言うけれど、うちの企業文化に合わないんですよ」などとよく返されるからです。

それには、「あなたは企業文化が勝手に湧き上がるものだと思っているからでしょう」と反論したい。いろいろな会社を見てきて、少なくとも私が思うのは、欧米のトップ企業は文化を戦略的に作り込んでいること。それが大事だとわかっているからです。本気で両利きの経営やイノベーションを起こしたいなら、それに合った企業文化を意図的につくる必要があります。

そして、その文化は何かというと、冨山さんがおっしゃるとおり、行動です。たとえば、野球からサッカーをやるとなったら、行動を変容させないといけない。ボールとバットは持ってはダメ。手を使うな。監督のほうを絶対に見るな。自分で考えて走れと。そういう行動規範にしないといけない。だいたい文化は言い訳に使ってはいけませんよね。

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