深化と探索には「野球とサッカー」ほどの差がある 日本企業が探索とスケーリングに不得手な理由
企業文化は、野球からサッカー型へ
入山:『両利きの経営』の増補改訂版では、新しい章が2つ増えました。文化の影響を取り上げた第4章と、チャールズ・オライリーがすごく推している、アイディエーション、インキュベーション、スケーリングという3つのイノベーションのプロセスの第7章。それから、AGCの事例も追加されました。冨山さんは、増補した内容について、どんな見解をお持ちですか。
冨山:今回、チャールズやマイケル・タッシュマンが文化の話に注目したのは正解だと思います。過去どうだったかは別にして、これから両利きの経営を仕掛ける脈絡で考えると、絶対にぶつかるのが、企業文化や行動の課題です。これは、かなりディープな組織能力論で、そこを乗り越えないとうまくいかない。
私が提唱しているコーポレート・トランスフォーメーション(CX)もまさにそれを言っていて、人々の行動様式、意思決定の癖、そのメカニズムをかなり深く変える必要があります。
私がよく例に出すのが、野球とサッカーの違いです。単に競技形態が違うだけでなく、意思決定のやり方がまったく違う。野球は毎回、インターバルがあって、ピッチャー、キャッチャーでサインを交換し、ベンチからも指示が出る。カーブを投げるか、ストレートを投げるか。スクイズをするのかどうか。そのサインによって命運が分かれることもある。