東大の祝辞でこのような言及がされる背景には、DEI(「Diversity(ダイバーシティ、多様性)」「Equity(エクイティ、公平性)」「Inclusion(インクルージョン、包括性)」の頭文字)推進の現場で、マイノリティを引き上げるための支援だけではなく、マジョリティ側にいる人たちの言動を変える必要性が認識されはじめているという変化もある。
エリートによる「環境型ハラスメント」?
東大が今年公表した「東京大学におけるダイバーシティに関する意識と実態調査」報告書の自由記述欄には、学生同士の間で繰り広げられる環境型ハラスメントともいえる問題について訴える声が上がっている。
女性:東京大学において、男子学生はいわゆるエリートであり、女子学生はそれに追随する存在として扱われていると日々感じます(もちろんそれを態度上で表面化することは少ないとしても)。
ゼミ後のお茶の洗い物を女子学生が買ってでなくてはならないのはなぜでしょうか? 進路について話すとき、なぜ女子学生は結婚の意思があるか聞かれるのでしょうか?
女性:指導教員がゼミ中に「研究をやるのは女性にモテるためだ」という趣旨の発言をしたことがあって不快だった。
直接学生への対応を性によって変えたりなどはないが、学生が男性であることを前提とするような発言(それ以外の性の人の存在を前提としないような発言)だったと思う。そのときは遠回しにおかしいのではないかと言い返したがもっとはっきり言えればよかった。
男性:私はクローズな同性愛者であって、例えば大学のゼミやサークルの飲み会などで交際相手の有無などを訊かれると(これはしばしば起きることである)、その際にカミングアウトするか嘘をつくかしか選択肢がなくなる。
カミングアウトすれば周囲から差別的に扱われるかもしれないという恐れがあるし、嘘をつけば自分のアイデンティティを否定することになり、これは多大な苦痛が伴うものである。大学はゼミやサークルの飲み会等においても交際相手の有無や性的志向については軽々に扱わないようぜひ周知をしていただきたい。
男性:私は男子校から東大に入学し、最初のオリエンテーション合宿やサークル見学などで、直接的な性暴力は見ていないが、性差別やハラスメントを多く見聞きした。自分は男性でそうした被害を直接受ける立場ではなかったが、見ていて不快だった。
でも、異性がいる環境とはこういうものなのか、大学生とはこういうものなのかと考え、私はその状況に慣れようと思った。その後数年は、ひょっとしたら私自身も、加害者となるような言動をしていたかもしれない。(抜粋)
無料会員登録はこちら
ログインはこちら