トヨタ「香川照之氏との契約終了」の先に待つ難題 単なるCMタレントに留まらない重責を担っていた

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トヨタ自動車社内報は『トヨタイムズmagazine』として打ち出され、従業員など関係者に配布されており、ヘタな雑誌よりも部数は断然多いはずだ(東洋経済オンライン編集部撮影)
香川照之氏はトヨタ自動車の社内報『トヨタイムズmagazine』に編集長としてたびたび登場
香川氏は『トヨタイムズmagazine』と名づけられた社内報でも頻繁に登場していた。今回のことは単体で約7万人、グループだと37万人を超えるトヨタグループ従業員や家族、取引先など多くの関係者にもショックを与えただろう(東洋経済オンライン編集部撮影)

一方で、昨今、特に#MeToo運動以降の「性加害」に対する世論は厳しさを増している。広告も例外ではなく、近年炎上する広告でもっとも多いのがジェンダーに関するものとなっている。

CMタレントの不祥事に関して、1社が契約終了を発表すると、他社もドミノ式に追随する傾向は一般的に見られるが、広告主企業としては、悪目立ちを避けるために、最初に意思表明をすることは避けたがる傾向がある。

今回は、トヨタが他社に先駆けて意思表明をして、他社が追随する形となった。日本一の大企業であり、グローバルで強い存在感を示すトヨタがこのような判断を行ったのは、香川氏を起用している企業だけでなく、世の中に対して大きなシグナルになった。

世界的なトレンドを踏まえて、他社に先んじて性加害に対抗する明確な意思表明を行ったという点で、トヨタは賢明な対応を取ったと言えるだろう。

契約終了で終わりではなく、ここからが正念場

ただし、CMタレントの契約を終了するからと言って、これで問題が解決したわけではない。むしろ、トヨタにとってはここからが本当の正念場とさえ言ってもいいかもしれない。

トヨタと香川氏の関係は、単に「CMタレントとして起用した/起用された」という関係にとどまらない。香川氏は「トヨタイムズ」(https://toyotatimes.jp/)の「編集長」として起用されており、トヨタという企業の情報の発信役としての「顔」の役割を担っていた。

「トヨタイムズ」は、トヨタが自社で運営する新たなメディアである。「トヨタイムズ」は2021年に第13回「日本マーケティング大賞」を受賞するなど、広告と広報が融合した新しい企業情報発信のあり方として、マーケターから広く注目され、高く評価もされてきた。

トヨタに限らず、多くの企業は、「会社側が伝えたいことをメディアが伝えてくれない」「メディアは正しい情報を伝えてくれない」という不満を抱えている。

「トヨタイムズ」は企業自身がメディアを立ち上げ、自社が伝えたい情報、伝えるべき情報を発信していくという試みであり、「意図しない情報が伝わってしまう」というリスクを回避する取り組みだったと言える

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