大手ホワイト企業への転職で地獄を見た男の告白 飲み会で人事評価、連日エクセルで単純作業…

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初めての転職活動は、予想以上に苦戦したという。1社目と近い業界や職種に絞り、50社ほど応募したものの、ほとんど書類選考で落ちてしまった。

その中で面接までたどり着いたのは4社。当時はオンライン面接がほとんどなかったため、面接が決まれば、そのたびに上海から日本に帰国して、面接が終わればとんぼ返りで上海に戻った。その結果、1社から内定をもらうことができた。それも、多くの人が知っている有名な大企業だ。

「やっと決まったと思いました。これでまた新しい道が開けるだろうって安堵しましたね」しかし、安堵が落胆に変わるのに、そう時間はかからなかった。

会社にこもって「エクセルの単純作業」という地獄

安斎さんの新しい配属先は、海外営業部だった。前職も近い部署だったため、多少の違いはあっても、大きく内容は変わらないだろうとイメージしていた。1社目では、外部との交渉や販促物の企画、営業予算の作成や、業界で活躍している人にインタビューをするなど、自ら足を使って積極的に動き回った。多忙ながらやりがいがあった。

しかし、転職した2社目では、会社から外に出ることはまずなかった。

「上司から言われた会議資料をパワーポイントでひたすら作るか、エクセルで作業することがほとんどでした。特別高度な技術を求められるわけでもなく、出荷情報の内容をAからBに淡々とコピペ(コピー&ペースト)するのみ。アナログなやり方なので5時間くらい掛かりますが、マクロを組むとか、設定を変えればすぐに終わる仕事でした」

それでも、安斎さんなりに少しでも資料を見やすくしようとフォントを変えたり、設定を見直そうとしたら、「勝手なことをするな」と怒られたという。ほかにも、業務改善を提案したり、新しい意見を言おうものなら、「口で言うのは簡単」「そんなことできるわけない」と一蹴された。

「外の新しい風を取り入れたい、気づいたことがあったら何でも言ってねって口では言うものの、実際新しい風なんて求めてないし、改善も期待していない。意見の内容がいい悪いは関係なくて、今までと同じやり方、みんなと同じでいることがそこでは正義なんだと思いました」

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