ただし、本能のパターンを2つだけに絞るのはシンプルすぎるため、「消費者の欲望を理解する」というゴールを目指すためには、レイヤーを少し下げる必要があります。2つの“究極本能”から派生する欲望を数種類のサブタイプに分けたほうが、人間の消費行動を分析しやすいはずです。
基本的な本能を整理してみると
その点で、幸いにも近年では、認知科学、行動科学、神経生理学、文化人類学といったフィールドの研究者が議論を重ね、ヒトの基本的な本能を4~10程度のパターンに整理する方法をいくつか提案しています。
その分け方は論者によって異なり、たとえば社会心理学者のドウェックは、「権力欲」や「達成欲」などを含む6パターンの分類を提案。進化心理学者のケンリックなどは、生殖と生存の本能を「自己防衛」や「地位の獲得」などに切り分け、全部で7つの欲望を提示しています。
そこで本稿では、過去100年以上にわたる心理学および社会科学の成果から、ヒトの欲求に関する洞察を抽出。
マクレランドの達成欲求、フェスティンガーの認知的不協和理論、バンドゥーラの社会的学習理論など、モチベーションに関する研究をすべてまとめたうえで、それらの共通項を「ヒトが持つ8つの基礎本能」 としてマッピングしました。具体的には、以下のようになります。
2 進める・・明確なゴールを設定し、それをクリアしたい本能
3 決する・・自分の行動や目標を自分で決めて実行したい本能
4 有する・・生存に役立つ物や情報を蓄積したい本能
5 属する・・特定のグループやコミュニティに入りたい本能
6 高める・・特定の集団のなかでより上の地位につきたい本能
7 伝える・・周囲の人間に自分の特性をアピールしたい本能
8 物語る・・自分の人生に大きな意味を感じたい本能
文化人、学者による複数のフィールドワークによれば、これらの欲求はどの文化でも認められるもので、あらゆる国の人間が持つ共通の本能だと考えられます。8つの分類が最適かどうかについてはまだ意見がわかれるものの、ここに挙げた基礎本能の存在そのものを否定する専門家はいないはずです。
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