ハーバード大学のジェラルド・ザルトマンは、こんな言葉で消費者の行動を表現しています。あらゆる消費者は自身のニーズを5%しか言葉で表現できず、残りは氷山のごとく無意識の底に隠されているのだ、という考え方です。
この数字がどこまで正しいかははっきりしないものの、私たちの脳が無意識下で働いていることを否定する神経科学者はいないでしょう。
代表的なのは、ルンド大学のペター・ヨハンソンらが行った実験です。
研究チームは、パッケージを隠した数種類のジャムとお茶を用意し、すべてを参加者に試食してもらったうえで、好きな味の商品を選ぶように指示。その後で全員に「なぜその商品を選んだのか?」と尋ねたところ、それぞれが「軽い苦味が好き」や「なめらかな舌触りが好き」といった理由を思い思いに答えました。
ここまでは、何らおかしな点はありません。
しかし、数分後に研究チームがこっそりジャムとお茶を別物にすり替え、今度は最初と違う商品を参加者に再び試食させたところ、おもしろい現象が確認されました。
商品のすり替えに気づかず、理由を後からでっち上げ
ほとんどの参加者は商品のすり替えに気づかず、それどころか「自分がその商品を選んだ理由」を後からでっち上げはじめたのです。
たとえば、あなたがこの実験に参加して、最初に食べたオレンジのジャムについて「さわやかなフレーバーが良い」と感想を述べたとします。
それに続いて、研究チームがこっそりとすり替えたブルーベリーのジャムを食べたとしても、あなたはその商品が別物であることに気づけず、さらには「ベリーの酸味がちょうどいい」などと言いはじめるわけです。
「そんなことが本当に起きるのか」と疑われそうですが、似たような現象は何度も確認されており、参加者の大半は商品がすり変わったことすらわからず、自分が感想をでっち上げたことにも気づけなかったと報告されています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら