心理学ではこのように一般化されていますが、そのありようは人それぞれです。Mさんはそれぞれのやり方でがん体験と向き合い、力強くレジリエンスを発揮されました。
最後にひとつ、大切なことを付け加えさせていただきたいと思います。
登場しているMさんも、今は前を向こうとされていますが、一時期は絶望に暮れ、こころの悩みが晴れる日が来るなどとは想像ができない日々を送っておられました。
病気になって今悩んでいる人へ
ですから、病気になって今まさに悩んでおられる方々には、「自分も早くレジリエンスを発揮しなければ」「悲しみを経て成長しなければならない」などと決して思わないようにしていただきたいと思います。
無理に前向きになろうとすることは、傷ついている自分をさらに鞭打つようなもので、決してご本人のためにはなりません。
そして、「困難との正しい向き合い方」というものはありませんし、100人の患者さんがいれば100通りの病気との向き合い方があります。
つらい出来事に出合ったときには、悲しみに暮れる気持ちや怒りに震える気持ちを押し込める必要はなく、むしろこれらの負の感情にも重要な意味がありますので、こころに蓋をしないことが大切です。
それぞれの方が苦しみながらも自らのおもむくままに過ごした先に、人のこころはどこかにたどり着くのではないか。私が実感する「レジリエンス」は、そのようなものです。
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