5年生存率33%でも…「今を見て大切に生きたい」 絶望や喪失から立ち直る力「レジリエンス」とは

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心理学ではこのように一般化されていますが、そのありようは人それぞれです。Mさんはそれぞれのやり方でがん体験と向き合い、力強くレジリエンスを発揮されました。

最後にひとつ、大切なことを付け加えさせていただきたいと思います。

登場しているMさんも、今は前を向こうとされていますが、一時期は絶望に暮れ、こころの悩みが晴れる日が来るなどとは想像ができない日々を送っておられました。

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ですから、病気になって今まさに悩んでおられる方々には、「自分も早くレジリエンスを発揮しなければ」「悲しみを経て成長しなければならない」などと決して思わないようにしていただきたいと思います。

無理に前向きになろうとすることは、傷ついている自分をさらに鞭打つようなもので、決してご本人のためにはなりません。

そして、「困難との正しい向き合い方」というものはありませんし、100人の患者さんがいれば100通りの病気との向き合い方があります。

つらい出来事に出合ったときには、悲しみに暮れる気持ちや怒りに震える気持ちを押し込める必要はなく、むしろこれらの負の感情にも重要な意味がありますので、こころに蓋をしないことが大切です。

それぞれの方が苦しみながらも自らのおもむくままに過ごした先に、人のこころはどこかにたどり着くのではないか。私が実感する「レジリエンス」は、そのようなものです。

次回:「10万人に1人の希少がん」と闘う女性の生きる力

清水 研 精神科医、医学博士

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しみず けん / Ken Shimizu

がん研有明病院腫瘍精神科部長、精神科医、医学博士

1971年生まれ。金沢大学卒業後、内科研修、一般精神科研修を経て、2003年より国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん医療に携わり、対話した患者・家族は4000人を超える。2020年より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。著書に「もしも一年後、この世にいないとしたら(文響社)」、「がんで不安なあなたに読んでほしい(ビジネス社)」など。

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