世界の主要中央銀行トップは先週末のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催年次シンポジウム)で、たとえ経済に多少のダメージがあろうとも利上げを貫徹する用意があるというシンプルなメッセージで一致した。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は26日の講演で、今後の金融政策の道筋はインフレ抑制に伴うコストとして残念ながら消費者と企業に痛みをもたらすだろうと述べた。
欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事は27日の討論会で、現実味が増しつつある欧州経済のリセッション(景気後退)入りが実際に起こったとしても、自分を含めECB当局者には金融引き締めを継続する以外の選択肢はほとんどないとの見解を示した。
2日間にわたるシンポジウムでエコミストらが発表した研究成果は回答を示すよりも多くの疑問を提示する形となった。参加者らは新型コロナウイルス禍が引き起こした新たな傾向が一時的なものなのか、それとも永続的なものなのかなどを議論する中で、中銀が数十年かけて確保した独立性を今こそ活用してインフレを抑制すべきだという見解で一致した。
国際決済銀行(BIS)のシン・ヒョンソン調査局長はインフレ抑制について、「決意は極めて強い。これこそがこの数十年間、中銀が準備してきたことだ」と指摘した。
テーマ別の参加者のコメントは以下の通り。
-リセッションリスク
パウエル氏に加え、シンポジウムの合間にテレビインタビューに応じた米金融当局者らは、投資家の間で見込まれている来年の政策転換について、自分たちは予想していないと強調。金利を引き上げて、しばらくは高い水準に据え置くとみていると述べた。シュナーベル氏も27日の最後の討論会でパウエル氏と同様の見解を示した。
-生産性
シンポジウム初日の中心議題となったのは米生産性の問題だった。前日に発表された米経済成長に関する2つの主要指標、国内総生産(GDP)と国内総所得(GDI)が生産性に関して異なる方向性を示したためだ。4-6月(第2四半期)実質GDP改定値は前期比で年率0.6%減少したが、4-6月実質GDIは同1.4%増だった。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のクリスティン・フォーブス教授は「非常に多くのことを左右する重要な要素が生産性だ。成長の抑制具合や、経済のスラック(たるみ)の程度を決め、金融政策で何を行う必要があるのかを決定する」と説明。「コロナ禍の後、どの水準で落ち着くか、われわれには分からない」と述べた。
-バランスシート
27日に発表された中銀のバランスシートに関する論文を巡り、中銀当局者らが相次いでコメントした。
コロナ禍の間に膨らんだバランスシートの縮小に主要中銀が着手する中、問題となるのは金融安定性の問題に突き当たる前にどの程度巻き戻しが可能かと、万一行き過ぎてしまった場合はどのように調整するかだ。
イングランド銀行(英中銀)のベイリー総裁は「金融を引き締めている局面で、金融安定上の理由から介入が必要になった場合、極めて難しい問題に直面する。金融引き締めを進めつつ、中銀が資産を購入するというまちまちのメッセージを外部に理解してもらうのは非常に困難だからだ」と指摘した。
-一時的か恒常的か
参加者はインフレ抑制のため積極的に対応する必要があるという点でほぼ一致したものの、最終的にコロナ禍前の長期傾向に回帰するかどうかについては見解が分かれた。
オバマ元米政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたハーバード大学教授(経済学)のジェーソン・ファーマン氏は26日の討論会で、中銀は経済に不要な痛みをもたらさないよう、最終的にインフレ目標を引き上げることを検討すべきだとの見解を示した。
一方、日本銀行の黒田東彦総裁は27日に日本のインフレ率について、年内は2%または3%に近づく可能性があるが、来年には1.5%に向けて再び減速すると予想しているとした上で、賃金と物価が安定的かつ持続可能な形で上昇するまで持続的な金融緩和を行う以外に日銀の選択肢はないと述べた。
黒田総裁、日銀は金融緩和策を維持する以外ない-ジャクソンホール
原題:
Central Bankers in Jackson Hole Embrace Tightening Mission Ahead(抜粋)
More stories like this are available on bloomberg.com
著者:Matthew Boesler、Catarina Saraiva、Jana Randow
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら