イワン・イリイン(1883-1954年)は、ソビエト政権に否定的であったため、祖国を追放された思想家である。彼は在外白系ロシア人の組織である「ロシア全軍連合(ROVS)」のイデオローグとしても知られる。スイスで死んだが、ソ連崩壊後、その遺骨はモスクワに埋葬された。
現在、ロシアでその著作が次々に発刊されている。プーチン大統領もその演説の中でしばしばイリインに言及しており、プーチン大統領の政治思想に大きな影響を与えている人物であると考えられる。
正教会の信仰は“ロシア”そのものへの信仰
イリインは熱心な正教会の信徒であり、正教信仰をロシア国家にとって最も重要な思想だと考えていた。イリインが「ロシアのナショナリズムについて」という書の中で「我々はなぜロシアを信じるのか」と問うている。イリインはソ連を否定していたが、祖国に対する愛は強く抱いていた。
「我々ロシア人は、どこに住み、どんな状態にあったとしても、祖国ロシアに対する悲しみを逃れることはできない。これは自然で避けがたいことだ。この悲しみは我々を見捨てることはできないし、そうするべきではない。それは祖国に対する我々の生き生きとした愛情と信仰の現れなのだ」と書いている。
イリインによれば、ロシア人であるということは、ロシア語を話すことだけを意味するのではない。「ロシアを心から受け入れ、愛をもってロシアの価値ある独自性を見て、その独自性がロシア人に与えられた神の賜物であることを理解する」ことである。
イリインは、チュッチェフの「ロシアをただ信じるのみ」というフレーズを挙げ、ロシアへの信仰は不可欠であり、ロシアへの信仰なくしては生きることもロシアを復興させることもできないという。そして、ロシアを信仰するとは神においてロシアを見ることだとする。
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