「気の合うチーム」がゼロからイチを生み出す ピーター・ティール「起業の極意」を語る

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しかし、現実問題としてカリフォルニアでさえも、起業家と組みたいと思う人はほとんどいない。歴史のない企業で仕事をするにはリスクが大きすぎると判断されるのです。ほとんどの人には、歴史のある企業と組みたいという意識があります。

そういった中で、新しい可能性に対して聞く耳を持つ人たち、開かれた考えを持つ人たちに、いかにインスピレーションを与えて一緒にやっていくかがポイントになると思います。

ロックバンドと似ている点、違う点

――成功したロックバンドなどは、みなが同級生だったり友達だったりという例が多いですね。

完全な例えとは思いませんが、一理あります。特に、会社を立ち上げた最初の頃は、ロックバンドに似ていると思います。つまり、お互い旧知の間柄で、それぞれ補完的なスキルを持っている。ボーカルが得意な人もいればギターが得意な人もいる。お互いのスキルを生かしているわけです。

ただ、大きな違いは、ロックバンドは常に4、5人のメンバーでずっとやっていけますが、成功する企業というのは、当初4、5人で立ち上げたとしても成長するにしたがって従業員の数が20人、100人、1000人となっていく。例えば、グーグルは1998年に2人で始めた会社ですが、今は3万人です。ロックバンドと異なり、成功する企業は変わっていかなければならない。

PayPalも仲間同士で始めましたが、すぐに数百人という規模になり、お互い知らない従業員も出てきた。そうすると、「かつてのようないい雰囲気ではなくなったね」という声も出てきます。でも、逆に20年たってもロックバンドのように仲間内でやっているのであれば、それは失敗であって、大きな企業に成長していくためには自らが変わらなければならないのです。

もう一つの例えとしては、小学校に通う小さなバスを思い浮かべてください。小さなバスで通う、ということは微笑ましいことですが、22歳になっても同じようなことをしていたら、この人は何かがおかしいということになります。やはり成功するにしたがって規模は大きくなり、成長していかなければなりません。

ただ、ロックバンドは素晴らしいと思いますよ。ミック・ジャガーのように70歳近くなってもまだ22歳ぐらいのようにいられるというのは、本当にかっこいい。

――日本にはトヨタ、ソニーのように、グローバルに活躍しているブランドたくさんあります。こうした日本のブランドから影響を受けたことはありますか。

日本には素晴らしい企業がたくさんあります。ソニーも、トヨタもそうです。素晴らしい世界クラスのブランドを築きました。インターネットの世界では、ソフトバンクや楽天などが素晴らしい仕事をしています。単に米国のやり方を真似するのではなく、日本市場に合わせたサービスを行っています。特に楽天などはAmazonやeBay(イーベイ)などの良いところを非常に独自の形で融合させました。ソフトバンクは米国のヤフーよりもさらに素晴らしいヤフーを生み出し、改善によって成功を収めました。ただ、こうした日本国内でうまくいっている事柄も、日本以外ではあまり認知されていません。

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