「勉強が苦手」誤ったレッテル貼られた子供の悲運 ほとんどの子は「勉強以外の困難」を抱えている

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すべての子どもが勉強の楽しさを実感できるよう、われわれ大人はこまやかにサポートしてあげる必要があるのではないでしょうか。その真逆で、子どもに対して「あなたは勉強が苦手だからね……」などと言って、子どもの苦手意識をより強くするなんて、言語道断です。

子どもの勉強がはかどらない理由を探すのは大人の役目

ところで、「勉強が苦手」というのと同様に、「勉強がめんどうくさい」と考える子どももよくいるものです。子どもがこのような態度をとると、親御さんは「この子は勉強が嫌いなんだな」と思いがちです。

でも、実はそうではありません。勉強をめんどうくさがる子どもの多くは、脳に大きな負荷がかかったときの「脳のフリーズ」、つまり、自分の脳が動かなくなる感覚に敏感だから、勉強を億劫がるのです。

実際、このような子どもたちをよく見てみると、「めんどうくさい」と言いながらも意外と、やるべきときには自発的に勉強しています。

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難しい勉強で脳に高度な働きをさせていると、脳は低酸素状態になり、ストレスを受けます。要は、脳が疲れるということです。この疲れは、本来は脳を働かせた後でしか起こりません。しかし、脳のフリーズに敏感な子どもたちは、勉強する前から脳にストレスがかかるのを予測し、「めんどうくさい」「やりたくない」と言うのです。

でもこのパターンの子どもも、あまり難しすぎない適切な難易度の問題に取り組んで、「わかるって楽しい」「できるってうれしい」という実感を重ね、億劫さよりも楽しさが上回れば、だんだんめんどうくさいと言わなくなります。

大事なことなので何度も主張しますが、脳が働けば楽しくなりますし、いっそうの成長が促されます。だからほんとうは、どんな子どもの脳も、勉強が大好きなはずです。

もしそうでないなら、勉強が苦手な理由、嫌いな理由が必ずあります。それを探すのは、私たち大人の役目です。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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