「個人主義的な自由」を追求すると逃げていく幸福 時間を人と共有することの計り知れない効用

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ただし、この種の個人主義的な自由には弊害もある。人々の生活がバラバラになってしまうのだ。現に僕たちは、同じ時間を共に過ごすことがどんどん少なくなっている。市場経済に後押しされた個人主義精神は僕たちの生活を支配し、伝統的な時間のリズムを破壊し、休暇や仕事や社交の時間をバラバラに切り離してしまった。家族そろって食事をしたり、友人をふらっと訪ねたり、みんなで集まって活動することは、かつてないほど難しくなっている。

この傾向はコロナ禍でますます悪化したようだ。自分も妻も友人もすれ違い、1週間のうちに1時間でも真剣な話をする時間を見つけるのは難しい。
本当に「時間がない」わけではなく、時間はあるはずなのに、人と一緒に過ごせないのだ。自分のスケジュールを自由に決められる一方で、仕事に縛られている僕たちは、お互いに切り離された生活を余儀なくされている。

共同の時間が奪われた状況を、自分だけの力で変えることは難しい(「毎週同じ日に仕事を休もう」と近所に住む全員を説得できるだろうか?)。それでも、一人ひとりが、個人主義の支配に協力するか対抗するかを選ぶことはできる。

時間のコントロールが最善の策ではない

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個人主義的な時間に対抗して、少しだけ共同の時間を取り戻してみてはどうだろう。たとえば、自分のスケジュールをいくらか妥協して、地域のスポーツや音楽の集まりに参加する。孤立しがちなデジタルの世界を離れて、フィジカルな世界で人との一体感を味わってみる。

もしもあなたが自分の時間をガチガチにコントロールしたい生産性オタクなら、スケジュールをいくらかゆるめて、自分がどう感じるかを実験してみるといい。自分の朝のルーティンを少しだけ崩して、家族や友人、地域の人たちと一緒に行動してみよう。すると、時間のコントロールを独占するのが最善の策ではないことに気づくかもしれない。

時間は自分のものになりすぎないくらいが、実はちょうどいいのかもしれないのだ。

オリバー・バークマン ガーディアン記者

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Oliver Burkeman

イギリスの全国紙ガーディアンの記者として、外国人記者クラブ(FPA)の若手ジャーナリスト賞などを受賞した気鋭のライター。著書『解毒剤 ポジティブ思考を妄信するあなたの「脳」へ』が世界各国で話題を呼んだ。ガーディアン紙で心理学に関する人気コラムを毎週執筆中。ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルといったアメリカの有名紙、雑誌サイコロジーズやニュー・フィロソファーにも記事を寄せている。ニューヨーク在住。

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