「個人主義的な自由」を追求すると逃げていく幸福 時間を人と共有することの計り知れない効用

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一人で休むよりも、みんなで休んだほうがリラックスできる。まるで休暇の気分が目に見えない雲となり、国全体にリラックスムードを振りまいているかのようだ。

いや、考えてみれば、そんなに不思議な話ではない。家族や友人と一緒に休暇を過ごしたほうが、人間関係はうまくいく。これから休みをとろうというときに同僚が慌ただしく働いているよりも、オフィスが閑散としているほうが安心できる。やり残した仕事や、受信箱を埋めつくすメールや、仕事を奪おうとする同僚の陰謀などを考えなくてすむからだ。しかし、それをふまえても、いっせいに休暇をとることの効果は不思議なほどに強い。

社会によって管理された時間も必要

ハーティグらの調査は、定年退職後の人たちでさえ、みんなが休暇をとっていると幸福度が高くなることを示した。似たような調査で、長期失業者が週末になると幸福を感じるという報告もある。そもそも仕事をしていないにもかかわらずだ。

理由のひとつは、平日に働いている友人や家族と一緒に時間を過ごせるからだろう。さらに失業者にとっては、みんなが働いているときに働いていないという後ろめたさから逃れられるという安心感も大きい。

ハーティグは批判を覚悟で、次のように主張した。

人々が本当に必要としているのは、個人のスケジュールの自由度ではなく、逆に「社会によって管理された時間」だ。時間の使い方を外部から決めてもらったほうが、人は安心して生活できる。コミュニティのリズムに合わせた暮らし、昔の安息日のようにいっせいに休む慣習、あるいはフランスのグラン・バカンス(毎年夏になると、数週間ほとんどすべての機能が停止する)のようなものが必要なのだ。

労働時間の制限について、法的規制があったほうがいいのかもしれない。日曜日はお店を開けてはいけないとか、あるいは最近ヨーロッパで法制化されたように、業務時間外に仕事メールを送ることを禁止すべきかもしれない。

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