西島秀俊「ユニコーンに乗って」の名演に見た希望 おじさんが若者に交じってやっていく理想の姿

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小鳥は、20歳以上年齢が離れもはや子供と言ってもおかしくない佐奈たちに、低姿勢で教えを受けていく。その様子は最初はいささか哀れにも見えて、佐奈世代ではなく小鳥世代が見たらいたたまれないのではないかと思ったし、だからこれは完全にコアターゲットでシニア層お断りドラマなのだとも思えた。だが小鳥はポジティブに新しい環境に慣れていく。佐奈たちもなんだかんだでおじさんに優しい。

そのうえ、意外とおじさんの培ってきた仕事術が役に立つ。ユニコーン企業を目指すスタートアップ企業にとって有益な行動を小鳥がするので、なかなか痛快だ。

例えば、アプリを作るとき、小鳥のスマホクラスの容量でも快適に動かせるものを佐奈は目指すようになる。あるいは、新規事業開発には資金が必要で、融資をしてもらう先はそれなりの大人が経営する企業になる。大人たちから見ると佐奈たちは信頼に足るのか判断しづらい。服装や言動などで判断するのは人を見る目がないと感じるが、世の中はなにかと保守的なものである。そこで活躍するのが小鳥である。

服装はきちっとしたスーツで、来客に美味しいお茶を入れてもてなしたり、季節の挨拶の品を送ったりと、細やかな部分に目配りする。結果的にそうやって信頼を勝ち得た人物はセクハラ親父で佐奈がピンチに遭うのだが、小鳥はそれにも気づいて未然に防ごうと動く活躍ぶり。

西島秀俊の咄嗟の頼もしさ

なんといっても、小鳥は佐奈の憧れの大手通信会社サイバーモバイルのCEO羽田佐智(広末涼子)とたまたま親しくなり、それによって、ドリームポニーと佐奈も恩恵を被ることになる。小鳥はなにかと“持ってる”人物なのだ。

佐奈もなんとなく小鳥が気になってきて、佐奈のことを想っているビジネスパートナーの須崎功(杉野遥亮)が嫉妬を覚えるような展開も。一応、ドラマは佐奈と須崎と小鳥の三角関係がベースにあることを匂わせている。ヒロインは同世代のイケメンとおじさん世代のイケメン、どっちを選ぶ?というものだ。そう、小鳥はなぜか独身なのである。そこがミステリアス。

第6話では、タクシーが急ブレーキをかけて佐奈が前につんのめりそうになったところを、さっと片腕でフォローするというガードマン的なところも見せた小鳥。演じる西島が、これまで公安刑事の役を何度も演じてきたことや、鍛え抜かれた身体によってアクションがお手のものだからこそ、咄嗟の頼もしさにも説得力がある。

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