永守重信氏「順風満帆な人生は伸びていない証」 人生や経営が安泰ムードになったら警戒すべし

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もちろん、一瞬で明るくなることはありません。困難が解決策を連れてくるわけですから、困難から逃げていては明るい朝はやってこない。もし、困難と解決策が別々に存在しているのであれば、困難から逃げて、解決策にたどり着くこともあるでしょう。

しかし、残念ながら、解決策というのは、困難と共にあるのです。解決策は、「困難さん」の上着の内ポケットに入っているため、真正面から困難にぶつからなければ出会えません。困難を見かけたら、こちらから出迎えるくらいでなければならないのですが、一般的には、多くの人が困難から逃げてしまう。だからいつまでたっても、解決策にたどり着かないのです。

失敗や挫折や強い人間、強い会社を作る

真夜中、夜明け前の暗い時間帯を過ぎて、少しだけ光明が見え始めて、それを乗り越えたところに明るい朝が来る―─。困難に真正面からぶつかっていく限りにおいては、絶対に問題は解決します。私はこの五十数年間1回たりとも、問題を解決できなかったことはありません。全部解決してきました。だから今日という明るい日を迎えているのです。

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困難に正面からぶつかるなら、失敗したり、挫折することもあるでしょう。その失敗や挫折が、強い人間、強い会社をつくることになります。失敗というのは一生懸命やる、挑戦するからこそ起きるもので、順風満帆な人生、会社というのは、「伸びていない」ことの証であり、決して誇れるものではありません。

成長する人生、会社というのは、必ず困難とぶつかるようにできています。ですから、人生も経営も、安泰ムードになったら、警戒する必要があります。挑戦の中から出てくる失敗と対峙して、そこから這い上がる。真っ暗なトンネルを突き進む。逃げ出したくなるような無理難題を解決していくことにこそ、人生、そして仕事の喜びがあると私は考えています。

永守 重信 日本電産会長 創業者、京都先端科学大学理事長

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ながもり しげのぶ / Shigenobu Nagamori

1944年京都生まれ。職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒業。73年、28歳で従業員3名の日本電産株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。80年代から国内外で積極的なM&A戦略を展開し、精密小型から超大型までのあらゆるモータとその周辺機器を網羅する「世界No.1のモーターメーカー」に育て上げた。代表取締役会長兼社長(CEO)、代表取締役会長(CEO)を経て、2021年より代表取締役会長。2014年、公益財団法人永守財団を設立、理事長に就任。また18年には京都先端科学大学を運営する学校法人永守学園理事長に就任。著書に『成しとげる力』(サンマーク出版)、『「人を動かす人」になれ!』(三笠書房)など。

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