コロナ対応の医療従事者に英国の「冷たい仕打ち」 「コロナ特別病欠規定」の廃止で減給や解雇も

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例えば、イギリスではコロナ感染者に直接対応しても、危険手当などの特別手当はつかない。これは2020年から変わらないどころか、2021年には「イングランドではコロナ医療従事者への特別手当は一切支給しない」と、国会で正式に決定された。同じイギリス国内でもスコットランドでは2021年夏に、一度きりではあるが、500ポンド(1ポンド162円で換算すると、約8万1000円)のボーナスを「コロナ医療手当」という形で支給している。

日本では業務内容や都道府県によって金額の違いはあるものの、コロナ感染症に対応する医療従事者には、経済的な支援があるケースが多い。東京都の例でいえば「医療従事者特殊勤務手当」という名目で、条件を満たした医療従事者へは1日あたり5000円が支給される。

見舞金制度も今年3月末に廃止

また、コロナ後遺症に苦しむ医療従事者への補償も、日本では国からの補助金を活用した「コロナ感染症対応医療従事者支援制度」から、支給条件を満たした医療従事者へ支払われる制度がある。

しかし、イギリスには感染した医療従事者への補償は一切ない。2020年4月、コロナ感染で医療従事者が死亡した場合、遺族に6万ポンド(同約970万円)を支給する「死亡見舞金制度」が始まったが、これも2022年3月31日に廃止された。

では、コロナ感染者に直接対応する医療従事者への支援も補償もないイギリスで、コロナに感染して後遺症で長期病欠となると、医療従事者はどのような処分を受けるのだろうか。実際の給与カットと懲戒処分を具体的に説明しよう。

まず長期病欠をした場合の給与カットだが、これは勤続年数により支払われる金額と期間は変わる。

勤続1年目は休職1カ月までは全額支給されるが、休職2カ月目になると半分に減額される。休職3カ月目以降は無給だ。2年目は休職2カ月までは全額支給、3、4カ月目は半額となり、5カ月目以降は無給となる。勤続6年目以降になると休職6カ月までは全額支給、休職7カ月目から6カ月間は半額となり、それ以降は無給だ。

一方、懲戒処分に関しては3段階に分かれる。

1カ月以上病欠すると、1段階目の懲戒である「警告」を書面で通告される。短期病欠でも12カ月以内に繰り返すと、4回目で1カ月間の長期病欠と同様の扱いになる。どちらの場合も文書での通告以外に、上司や人事担当者、さらに上層部とのミーティングがあり、質問攻めに遭う。

警告を受けた時点から6カ月以内に長期病欠や短期病欠を繰り返せば、高い確率で懲戒処分の2段階目に進むことになる。3段階目になるとさらに重い警告が言い渡され、懲戒免職となるケースが多い。

コロナ病棟での勤務を繰り返していた身として、勤務中にコロナ感染をした医療従事者へのこれらの病欠規定は、非常に厳しいと感じる。

さらに、イギリスのコロナ医療従事者は経済的な厳しさだけでなく、労働環境も先進国とは思えないほど過酷だ。

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