ダイハツ「可愛さのチューニング」踏み込む背景 2代目ムーヴ キャンバス開発で求められたこと
こうした数字と若い女性の軽自動車人気を考えれば、ムーヴ キャンバスのユーザー属性は、感覚として違和感はないだろう。なぜならば、日常生活の中で、買い物や子どもの送り迎えなどで軽自動車を使っている若い女性の姿をよく目にするからだ。
ところが、軽自動車市場の全体を俯瞰すると、ユーザーの実態はそうしたイメージとはまったく違う。
一般社団法人 日本自動車工業会は2022年3月、「軽自動車の使用実態調査報告書」を公開した。これは2年に1度行う、大規模な市場調査だ。その中で、軽乗用系ユーザーの属性について「中心ユーザーは、60代以上と女性で変わらず、高齢化が進展」と市場現状を表現している。
具体的には、男女比は「32対68」と女性が多く、世代別でもっとも多いのは60代で24%、次いで70代以上(21%)、50代(19%)、40代(18%)、30代(11%)と続き、20代以下は7%にとどまる。
こうした世代の比率は、トールワゴンに絞って見ても概ね同じ傾向であるが、これがスーパートールワゴンになると、40代と50代がともに22%ともっとも多く、次いで、60代(19%)、70代以上(16%)で、若い世代は30代(15%)、20代(6%)と低い比率になっている。
いずれにしても、若い世代で軽自動車に乗っている人は“かなり少ない”というのが軽市場の実態なのだ。その中で、ムーヴ キャンバスのユーザー属性は、異例だと言えるだろう。
キャンバスユーザーの「若さの秘訣」は?
2代目ムーヴ キャンバスの開発を担当し、タントやSUVの「タフト」も手がけている、くるま開発本部 製品企画部エグゼクティブチーフエンジニア 部長級の小村明紀氏に、ムーヴ キャンバスユーザーの“若さの秘訣”を聞いてみた。
すると「訴求についても、一般的なクルマと同じ手法だった。CMでは若い世代に人気の女性タレントを起用し、店舗での商品展開で若い世代に馴染みやすくするような工夫があったとは思うが……」と、ズバリと言える答えはなさそうだった。
一方で、「街中で見て“あのクルマは何だろう”と、最初はダイハツ車だと認識せず、そのあと販売店に来て購入する人も珍しくなかった」「ネットで“可愛い 軽自動車”で検索すると、ムーヴ キャンバスがトップに表示される場合も多い」という事実は認識したうえで、「(たとえば若い女性が)クルマを初めて買うときに、何らかの情報を取ろうとする中で、(ネットやSNSからの)情報が購買に結びついたのではないか」という考えも示した。
要するに、ムーヴ キャンバスは、ダイハツの当初の目論見以上に、「可愛いクルマだからよく売れた」ということだ。
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