老親と自分の「認知症対策」、最適解がわかった 主張の異なる良書を精査してわかった「真実」

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この検査は筑波大学発のベンチャー企業MCBIが提供しているもので、全国2000以上の医療機関で受けられるそう。ほんのちょっとのもの忘れ程度で検査を受けるメリットはないような気がしますが、興味のある方はネットで検索するなどして詳しく調べてもらえればと思います。

また、もしMCIと診断されても、過度に恐れることはないようです。日本認知症予防学会理事長の浦上克哉さんは、著書『科学的に正しい認知症予防講義』で、認知症はいったん発症したら元の状態に戻ることはできないが、認知症になる手前の状態のMCIなら元の状態に戻ることも可能だと書いています。

なお、浦上さんが認知症のリスク因子として紹介しているのが、『Lancet』という一流の医学学術誌で発表されたもの。中年期(45~65歳)のリスク因子としてあげられているのは「難聴、頭部外傷、高血圧、過剰飲酒、肥満」の5つ。このうち最もリスクが高いとされているのが「難聴」です。高血圧や肥満より、難聴のリスクが高いというのは意外な気がしますよね。

浦上さんによれば、難聴があると、コミュニケーションがとりにくくなるうえ、耳から脳への刺激が減ってしまうからだそう。コミュニケーションがとりづらくなれば、仕事も地域の集まりなども参加しづらくなり、社会的孤立を招くことに。社会的孤立は高齢期(66歳以上)の認知症リスクにあげられていますから、耳が大事だというのもうなずけます。浦上さんは耳にやさしい生活を心がけるとともに、定期的に聴力検査を受けて、聞こえづらくなったら早めに補聴器を使うようにアドバイスしています。

「歯周病」にも要注意

ほかにも注目されているリスク因子があります。それが「歯周病」です。アルツハイマー病の専門医である新井平伊さんは、著書『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』で、マウスにジンジバリス菌(歯周病菌の一種)を与えたところ、認知機能が著しく低下し、アルツハイマー病の病態も悪化したという実験を紹介。さらに歯周病は糖尿病と深く関連していることから「歯周病‐糖尿病‐アルツハイマー病」といった三つ巴の負のスパイラルが形成される可能性があるとも述べています。

生活習慣病のリスクが高まる中高年は、糖尿病管理のためにも認知症予防のためにも、歯科医での定期的なチェックは欠かさずに受けたほうがよさそうです。

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