欧州を流れるライン川の水位が今後、事実上の航行不能となる水準近くまで低下する見通しだ。経済危機回避を図る欧州で物流が大きなリスクにさらされている。
主要輸送拠点であるドイツのカウプではライン川の水位が2日、2018年以来の水準に低下。週末までに47センチメートルに低下すると予測されている。これは航行不能な水位まであと7センチの水準だ。
欧州は既にこの数十年で最悪のエネルギー供給危機に見舞われている。ロシアが天然ガス供給を制限し、インフレを加速させているためだが、今度は気候変動で欧州のこうした問題が深刻化しつつある。欧州各国政府はエネルギー危機がきっかけとなり域内がリセッション(景気後退)に陥る事態を避けようと取り組んでいるが、ライン川が航行不能となれば、燃料や化学製品などあらゆる産品の物流が滞る。
ドイツのエネルギー会社EnBWは発表資料で、「石炭輸送は低水位によって既に制約を受けている。利用できる船舶が少ない上、使用予定の船も積み荷を減らしているためだ」と指摘。「このため石炭の輸送コストは上昇傾向にあり、石炭火力発電所の運営費も膨らんでいる」と説明した。
JPモルガン・チェースのアナリスト試算によると、前回水位が低下した18年のケースでは、ドイツの10ー12月(第4四半期)国内総生産(GDP)が0.4%押し下げられた。今回は、ライン川がロシアからのエネルギー供給減少分を補うルートの1つとなっているため、航行確保の必要性はさらに大きいと言えそうだ。
原題:Europe’s Rhine River Is on the Brink of Effectively Closing (1)(抜粋)
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著者:Jack Wittels、Kwaku Gyasi、Laura Malsch
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