大家が親に連絡も「LGBTQや高齢者」家借りる困難 拡大する日本の住宅弱者問題の現在地

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全宅連が現在作成中の調査報告書では登録戸数自体は74万戸あるが、募集中の物件は全体の1.6%にあたる1.2万戸。低所得者を対象に考えると、生活保護の住宅扶助額で借りられる住宅の数が肝となるが、都内で単身者向けのワンルームを見ると395戸しかない(2022年4月現在)。制度はあるが、借りられるだけの物件がないのである。

同様に、この施策のためにいくつかあるうちの助成を1つでも行っている地方公共団体は9都道府県44市町村(2022年9月時点)と少なく、制度はあっても大半の地方公共団体では使えない。助成額も少なく、特に空き家を改修して利用する場合には耐震改修だけで予算を使い果たしてしまうこともありうる。本気でやるつもりなら大幅な見直しが必要ではなかろうか。

シングルマザー向けの賃貸は改善が見られる

シングルマザーについては2012年に母子を対象としたシェアハウスが誕生。2017年6月にオープンした、食事や見守りのあるシェアハウスMANA HOUSE上用賀が話題になり、以降シェアハウスを利用した住まいの提供が少しずつ増えてきている。2019年6月には群馬県前橋市に県営住宅を利用したシェアハウスが誕生し、話題にもなった。

「高齢者、障害者を対象にすると住宅のハード部分に手を入れなければならなくなりますが、シングルマザー向けならそれほど大きな改修がいりません。また、シングルマザー向けといえば社会貢献にもなり、メディアにも取り上げてもらいやすく、空き家解消にも役立つ。そうした社会の変化が増加の背景にあるように思います」と20年以上に渡り、シングルマザーの居住環境について研究してきた追手門学院大学准教授の葛西リサ氏は話す。

加えて家賃保証の制度が確立し、仕組みができて使いやすくなってきたことも大きい。ただし、こうした制度を利用しても収入が低いシングルマザーの場合、仲介会社が後押ししてくれなければ普通の賃貸市場では借りにくいのは変わっていない。

それでもシングルマザー向けの住宅を紹介する「マザーポート」には36事業者、50軒ほどの住宅が紹介されており、公営住宅が当たればラッキー、それ以外に手がないとされていた時代に比べれば光が見えてきた状態だと葛西氏。まだまだ足りないが、不動産市場の変化がシングルマザーの住宅問題には多少なりともプラスに働いているのだ。

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