大家が親に連絡も「LGBTQや高齢者」家借りる困難 拡大する日本の住宅弱者問題の現在地
前者は名古屋市内や都内の集合住宅を入居者ごと購入し、それらの住宅のうちの一部を生活に困窮する母子世帯を含む、困難を抱える女性向けに相場よりも安い家賃で貸している。一般には低所得者、あるいは、母子家庭なら質にこだわらなくてもいいだろうという考え方もある中で、きちんとした住宅を提供している点に共感すると葛西氏は言う。同法人は地元で建設会社を継承した若い経営者がそれまでの事業以外に社会貢献的な事業も始めたいとスタートしたもの。最近ではメディアにも取り上げられている。
建て替え予定の市営住宅を必要な人に貸す
もう1つの取り組みは、尼崎市の建て替え案件の市営住宅全700戸のうち、350戸を転貸可能にし、まずはそのうち100戸をコープこうべが借りて大家となり、そこを窓口にさまざまな民間の支援団体に1カ月1室6500円で貸すというもの。建て替え予定の団地では次第に人が抜けていくため、コミュニティの維持が難しくなる。そこに各種の支援団体や、若い人が入っていくことは既存の住民のためにもいいという判断である。
ただ、いきなり知らない人が入ってくるのでは住んでいる人も心配。そこでコープこうべが支援団体とコンソーシアムを組み、支援団体が事務所を置くなどして各種調整に当たるという。シングルマザーや外国人、高齢者など困っている人の住宅としてだけでなく、子どもや若者、DV被害者の居場所などさまざまな使い方が想定されている。大家となればさまざまな手が打てるようになるのである。
この3例に限らず、自ら大家になれば問題は解決しやすくなるという発想は広がりつつある。また、最近の事例は市場や投資家の資本を利用して、ある程度の規模でビジネスとして進めている点が特徴だ。そこに投資をしよう、社会貢献をしよう、という人や企業が増えており、それが大きな光明である。
低年収世帯の増加、公営住宅の減少、都市での高齢者も含めた持ち家率の低下などといった社会の変化を考えると、住宅を貸してもらえない問題は今後も楽観視はできない。しかし、新たな貸し方が広まることで少しでもいい方向に行くことを期待したい。
*1 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
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