大正製薬vs消費者庁「パブロンマスク365」の攻防 景品表示法「不当表示」で3年間にわたって争う
消費者庁による景表法違反の追及フローとしては、まず、消費者庁であやしいと思われる広告に対して、調査要求の手続きが行われる。消費者庁がこれは厳しく追及しなければならないと判断すると、広告表現の根拠を15日以内に提出するよう企業側に要求する(「合理的根拠の提出要求」と呼ばれる)。
その後、書面ないし書面と口頭で弁明せよと「弁明の機会」を与えられるが、措置命令が覆ることはまずなく、予定調和的に措置命令が下される(詳細は『大幸薬品「クレベリン」の広告はなぜ問題なのか?』の記事をご覧いただきたい)。
一般的に、消費者庁が下した措置命令や課徴金命令に対して争う場合、その方法は2つある。
1つ目は、消費者庁に不服を申し立てること。これを「審査請求」と言う(措置命令から3カ月以内)。大正製薬はこの方法を選んだ。詳しくはあとで述べる。
2つ目は、裁判所に取消訴訟を提起すること(措置命令から6カ月以内)。
お茶のダイエット効果の訴求で措置命令を受けたティーライフなどは、この方法を選んでいる。
3年続いた消費者庁と大正製薬の抗争
大正製薬の「パブロンマスク365」広告に関しては、2019年1月15日に行われた消費者庁の合理的根拠の提出要求から、大正製薬の実質敗北が確定した今年3月1日の第三者委員会の結論まで、3年を超える抗争が続いた。
この抗争は紆余曲折を含むもので、異例の展開となっている。第三者委員会の認定をベースとしてタイムラインを追ってみよう。
まずは第1幕は、措置命令が下るまで。消費者庁が一旦下そうとした措置命令を書き改めるという異例の出来事があった。
2.2019年1月15日、消費者庁が大正製薬に1の広告の合理的根拠の提出を要求し、同30日、大正製薬が提出。
3.同年3月5日、弁明の機会付与通知(その際に予定される措置命令の内容開示。その内容は「資料は提出されたが合理的なものとは認められなかった」がテンプレートで、本件もそうであったと思われる)。
4.同年3月19日、大正製薬は弁明書を提出(そこでは詳細な根拠が示され、また、措置命令が下されれば争う旨が記載されていたものと推察される)。
5.消費者庁は3月の措置命令ドラフトを書き改めて提示したうえで弁明の機会を再設定し、6月7日に通知。6月17日に大正製薬弁明書提出。
6.同年7月4日、消費者庁は大正製薬に措置命令を下した(テンプレート通り)。
第2幕では措置命令のあと、大正製薬は消費者庁が弁明の機会において示した実験を批判するプレスリリース(前出)を即座に出し、その後法的手段を採ったが、結局敗北に終わった。
8.不服申立を受けた消費者庁は、措置命令に関わっていないものを「審理員」として選任。審理員は措置命令相当の意見書を提出(時期不明)。
9.2021年9月29日、消費者庁は諮問説明書を添付して総務省の第三者委員会に諮問。ここでの理由付は審理員意見書の理由付と異なっていた。
10.委員会は、5回審議(2021年11月1日、11月25日、22年1月13日、2月17日、2月25日)を行う。
・消費者庁は2022年1月25日、資料提出
・大正製薬には2021年10月11日に、反論あれば10月25日までに提出せよと通知するも、大正製薬は何ら提出せず
11.2022年3月1日、第三者委員会は措置命令が妥当との結論を示した。
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