アイボットを発明したきっかけは、車道から歩道に乗り上げられずに苦労している車椅子の障害者を見かけたことだった。デコボコの道も無理なく走れる車椅子を考えているうちに、階段も昇降でき、そして人と話す時には後輪で立ち上がって同じ高さで目線が合わせられるような機能も加わった。そんなことをしながらもバランスを失わず、車椅子は身体の延長のように動く。
ポータブル人工透析装置も彼の偉業
こうした機械や電気の発明以外にも、医療機器で数々の成功を収めてきた。ケーメンの最初の発明は、インシュリンなどの薬品を一定量ずつ投与できる機械、オートシリンゲである。
大学生だった頃に、医学部に通う兄が不満を口にするのを聞いて、それならばと作ってみたのだ。大学を退学してから開発を続けて製品にし、後に会社ごと売却。それで大きな富を得た。
また、1990年代半ばには、洗濯機ほどのサイズだった人工透析装置をポータブル・サイズにまで縮小した。病院のベッドに何時間も縛られていた患者は、この発明によって自由を取り戻したと言っても過言ではないだろう。
ケーメンが保有しているパテントは約400件。現在は自分の発明会社を持ち、500人のエンジニアや技術者を抱えている。難題を抱えた企業から依頼される開発プロジェクトを一方で進めながら、もう一方で自分の思うままの発明を行う。
ケーメンにとって、発明とは「こういうものが世の中にはなくてはならない」という本能によって導かれるものだ。最近では、発展途上国で利用できる浄水器や、19世紀に構想されていたエンジンを実現したものがある。前者はどんな水も飲料水に変える浄水器、そして後者はどんな燃料も電気に変換するものだ。医療から機械、電子技術と、ケーメンの発明は境界を知らない。
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