ドンキ安田会長が「引退」、その激烈人生 圧縮陳列に放火事件…流通王の生き様
こうした現場を担うのが、権限委譲を徹底された現場スタッフだ。スポット商品の仕入れや価格決定、売り場構成を任せられると同時に、「権限=責任=報酬」が明確化され、社内に熾烈な競争意識が植え付けられている。「成績がよければ役職が一気に上がり、30代前半で年収1000万円以上を稼げる。が、悪いとすぐ降格され、年収が2割以上ダウンすることも」(元グループ社員)。やる気のある社員は会社に残るが、一方で辞める社員も多い。
成長過程では軋轢もあった。2004年に発生、死傷者も出した放火事件では、原因が圧縮陳列による業務上過失かのように報じられ、メディアとの対立が先鋭化。深夜営業に反対する住民運動も一時激しかった。イオンとはオリジン東秀をめぐり、TOB(株式公開買い付け)合戦を繰り広げるなど、つねに“ヒール役”との印象がついて回った。
もっとも最近は様変わりしている。ヤンキーがたむろするようなイメージは今は昔。破綻した総合スーパーの長崎屋を2007年に買収、その後設立した「MEGAドンキ」はファミリーが多く集まる。ドンキも店舗数が増えて存在が“普通”になりつつある中、とがっていたドンキの強みを逆に失うかもしれない、ジレンマとの戦いでもある。
カリスマなき後、ドンキはどこへ向かうのか。安田氏が残した宿題は大きい。
(「週刊東洋経済」2015年2月21日号<16日発売>「核心リポート02」を転載)
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