「リノベ」でいつだってやり直せる、家も人生も ドラマ『魔法のリノベ』が描きたかったこと
話の後半では、事故物件で亡くなった人の背景がわかってきて、夫婦もその人にだんだん共感できていく。最後には「でも朝日は昇るし」と心理的な解決がなされ、むしろ前の人の遺志を引き継いでそこに住むような形になる。
西尾:家族の心理までリノベされたんですよね。私が『リフォームコンパス』でリノベの相談に応じていても、最初、お客様はたいていすごく悩んでおられます。単なる部分的なリフォームではなく、大がかりなリノベですから、何か現状に困っていたり、すごく迷っていたり、「失敗したらどうしよう」と……。それがリノベした後にはとても明るい顔で、それは嬉しそうに報告に来てくれる。間取りと一緒に人生も変わったからなんでしょうね。
脚本とリノベには共通点がある
上田:脚本とリノベって少し近いところがあるように思うんです。脚本ってゼロから何かを創作するというイメージを持たれることが多い、アートな領域というか。でも本当はデザイン的なんです。目の前にある材料と、プロデューサーさんや監督さんからの要求と、いろんな事情を聞いて「この形でどうでしょう?」と提案する。
リノベもそうですよね。ゼロベースでつくる建築ではなくて、ある文脈を読み解いたうえで新たな文脈に接合していく……。
脚本にはもちろん自分の好みも入れますが。
原作がある場合は原作者さんの意向もありますしなおのこと、リノベ的な作業が必要になってきます。プロデューサーや監督が施主さんみたいな感じかな(笑)。
さらに今回はリノベの専門家である西尾さんに監修してもらっているので、西尾さんも共感できるものに自分もしたいですし。
それでトータルで見たときに完成したものに近づけていくのが、脚本家としておもしろいところです。