「おもちゃとジェンダー」老舗メーカーが挑む難題 子どもが「自らの好奇心に従えない」複雑な要因

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――子どものためのものでありつつ、選んで買い与えるのは親。純粋な好奇心とはどうしても隔たりができてしまうようにも感じます。

悩ましい部分だ。商品開発においても、どちらかというと親、とりわけお母さんの言葉というのを強く意識してしまうことがある。気づいたらお母さんのための商品を作っていたということもあるし、実際そういう商品も販売している。

ただ、開発の原点はあくまで子ども。それを第一に考えたい。そうしてできた商品を、親御さんにどう伝えて買ってもらうかというのはまた次の話、というふうに分けて考えていけばいいのかなと思っている。

その伝え方の面では、今まで「ピープル」という社名を出さずに行ってきたPRを少しずつ変えたい。われわれの商品は赤ちゃんが生まれてから2歳くらいまでで”通りすぎて”しまうものが多い。メーカー名を覚えてもらうより商品そのもので勝負することを重視してきた。

ただ、赤ちゃんと真摯に向き合って商品開発していることを、親御さんやビジネス界隈、メディアなどにしっかり伝えていくことで、大人目線で「なんだこれ」と思う商品でも子どもは喜ぶかもしれないと、選んでもらうきっかけになるだろう。2022年4月に新しい広報チームを立ち上げた狙いはここにある。

ヒットした「ねじハピ」の裏事情

――好奇心を追求した先には「ジェンダーレス化」もあると。

ヒットにつながったDIY玩具「ねじハピ」にも、実は悩ましい点が(撮影:今井康一)

重要なテーマの1つになっている。われわれが明確にジェンダーのテーマをもったのは去年くらいからだが、これまでも子どもに対し「好奇心をストップさせなくていいんだよ」という商品開発・施策は行ってきた。

例えば2018年に発売したDIY玩具「ねじハピ」は、女の子も電動工具を使ってみたいよねという発想のもとに開発した商品だ。親からもこういう商品が欲しかったとの声をもらい、大きなヒットにつながった。

――ただ「ねじハピ」はピンク系の配色で、ジェンダーレスというよりは明確に「女の子向け」を意識した商品のように見えます。

そのとおりで、ここが非常に悩ましい。実際ねじハピは(楽しそうに遊んでいる女の子の様子を見るなどして)男の子からも関心を得ている商品で、販売店の方からは「男の子向けも出してほしい」といった声が多く寄せられていた。

そこで男女関係なく買ってもらえるよう、寒色・暖色の中間的な配色にしたものを発売したのだが、いざ出してみると、これがまったく売れなかったのだ。

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