リハビリメイクが蘇らせた素肌と「魔法の言葉」 最愛の娘の半身は赤いアザで覆われていた

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かづきさんが有梨沙さんにかけた“魔法の言葉”はこうだ。

「高校生の間はみんな制服を着て、集団生活で前にならえでしょ。みんなと同じふうに生きていかなきゃいけない。でも大学生になったら自由になるわ。服装も、人づきあいも自分のペースでいけるから、あなた大学生から変わるわよ!」

この言葉で、有梨沙さんを縛っていた鎖が解けた。

大学にはアザを隠さずノースリーブで通うようになり、恭子さんが「1枚羽織ったら?」と勧めても、「めんどくさいし、暑いからいい」とそのまま出かけていった。大学で多様な人と触れ合い、海外留学も経験して視野を広げた有梨沙さんは、“みんな自分のことで精いっぱいだし、人は自分が思うほど他人の肌を気にしていない”と実感した。また、“何かあれば、リハビリメイクという手段がある”という安心感も、彼女を心強くした。

異性に肌を見せるときが来たら…

そのまま素肌でいてもいいし、必要なときはメイクすればいい。

有梨沙さんはありのままの自分と手をつないで歩き出した。やがて、ほがらかに青春を謳歌する彼女の前に、ひとりの男性が現れた。友人たちとの集まりで出会った隆さん(仮名)と意気投合し、異性として意識するようになった彼女の胸には、母の教えが息づいていた。

「異性とお付き合いが始まれば、必ず肌を見せる機会が訪れる。そのときは、アザのことを隠さずに自分から言いなさい。そこで相手が顔を曇らせるようなら、そもそもそこまでの人。あなたからさよならしなさい」

有梨沙さんは隆さんに「私、こういうアザがあるんだ」と切り出した。

隆さんは特に驚くこともなく、まるで「ここにほくろがあるんだ」とでも打ち明けられたように「へえ、そうなんだ」となめらかに彼女の告白を受け止めた。有梨沙さんは彼の姿勢に救われ、のちにふたりは生涯のパートナーとして将来を誓い合う。

隆さんとの結婚が決まり、娘が選んだウェディングドレスを見て恭子さんは度肝を抜かれた。それは肩も胸元もあらわなデザインで、「娘が着られるのは長袖のレースのドレスだけ」と思い込んでいた彼女を大いに驚かせた。

「これを選ぶか!とびっくりしましたね。おそらく娘にとって、もうアザは隠すものではなくなっていたのでしょう。私のほうがどこかで世間体を気にしていたのかもしれません」

それでも、晴れの日の祝福を兼ねてリハビリメイクを受け、優美なドレスに身を包んだ有梨沙さんは幸せな花嫁になった。かづきれいこさんの大阪サロンから式場へ講師が出張し、メイクを手がけてくれたという。有梨沙さんが受けたメイク代は約5万円で、これにスタッフの交通費が加わった。ウェディングメイクの場合、アシスタントの有無や移動距離、会場の自由度によって大きく費用は変動するが、できる限り要望に応じてもらえる。

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